200文字のデッドブレイク~50話掲載~
51話~
51. 【ただいまの習慣】
一人暮らしを始め、半年。過保護な両親の大反対を押し切ったくせに、寂しさのあまり帰宅時に「ただいま」と言うのが習慣になっていた。返事なんてあるわけないのに。だけど、ある日の夜、台所から「おかえり」と母の声がした。向かうと誰もいない。「たまには一緒に野球でも見ようか」父の声もした。「いいわね」母の声。二人の声は冷凍庫からしていた。これが幻聴か。二人の死体、そろそろちゃんと処理しないとな。
52. 【百物語の終焉】
昔から、百番目の怖い話を読み終えると、本当の怪異が起こるって言われている。この短編集は、今の話でちょうど百個目。……あれ、気づかなかった?部屋の電気が急に暗くなって、窓の外が真っ赤に染まっていることに。後ろを振り返っちゃだめ。そこには、このノートを読み終えるのを百年間待ち続けた「執筆者」たちが、新しい仲間としてあなたを迎えに集まっているんだから。
53. 【新しい持ち主】
実は、このコンテストの本当の目的は「怖い話を集めること」じゃないんだ。この呪いのノートを代わりに持ち歩いてくれる「新しい持ち主」を探すための儀式だったの。最後まで読み進めたあなたは、歴代の誰よりもノートと相性が良かったみたい。おめでとう。今夜から、あなたが寝ている間に、あなたの口からこのノートの続きが吐き出され続けるよ。逃げても無駄。もう、ノートはあなたの体の一部だもの。
54. 【残り時間】
「1時間後の未来」が見えるメガネを手に入れた。これをかけてテストは百点満点を取れるようになったし、交通事故も避けられるようになった──けど、ふと鏡を見たら、1時間後の私が喉をかきむしり、目からは血の涙を流していた。メガネを外そうとしたけれど、手が麻痺して動かない。それどころか体まで。鏡の中に、私にメガネをくれたおじいさんが現れ、笑った。「こわがるほど、魂がおいしくなるんだ」残り──59分。
55. 【鏡の練習】
アイドルに憧れる私は、毎晩鏡の前で可愛い笑顔の練習をするのが日課だ。口角の上げ方一つまで完璧にする。でも、今日はおかしい。私が疲れてふっと真顔に戻ったのに、鏡の中の私だけが、まだ不自然に口角を上げたままニチャァッと笑っている。思わず固まってしまった。鏡の中の私が私の首に向かって手を伸ばしてきた。「ねえ、絶対私のほうが可愛い」
56. 【律儀な幽霊】
空っぽのエレベーターに乗り込み、私は13階を押した。だけど私が『閉』を押そうとしたとき──ダンッ!と、ナニカが押した。私以外誰も乗ってないのに。続いてダンッ!ダンッ!ダンッ!途中階が勝手に押された。2階に着いた──けど、開かずゆっくり昇っていく。ダダダッとエレベーターが揺れ続けた。まるで子供が走り回ってるみたいに。そして13階。ドアは無事開き、私は転がり出た。耳元で声がした「うちの子がすみません」
57. 【スマートスピーカーの独り言】
部屋で勉強中、スマートスピーカーが突然「そこ、座られると狭いです」と喋り出した。周りには誰もいない。「どうしたの?」と話しかけると、スピーカーは無機質な声で答えた。「あなたの椅子の背もたれと、あなたの背中の間に、髪の長い女の人が無理やり入り込んでいます」ゾッとして背後に手を回すと、体温のない冷たい指先が、私の指をぎゅっと握り返してきた。
58. 【自動販売機の指】
部活帰り、喉が渇いて自販機でジュースを買った。取り出し口に手を突っ込むと、アルミ缶の感触ではなく、ヌルリとした「人間の指」に触れた。悲鳴を上げて手を引き抜こうとしたが、その指が私の手首をガッチリと掴んで離さない。自販機の隙間から、血走った目がこちらを覗いている。「やっと、交代の人が来た」という枯れた声と共に、私は狭い取り出し口の中へと引きずり込まれた。
59. 【三拍子の足音】
音楽室のベートーベンの肖像画は、夜になると目が動くという。放課後、一人で確かめに行くと、肖像画の彼は優しく微笑んでいた。「噂なんて嘘じゃん」と笑って帰ろうとした時、背後からズシン、ズシン、と重い足音が聞こえてきた。振り返っても誰もいない。でも、床の埃には、肖像画から伸びる「三本足」の奇妙な足跡が、逃げる私の背中を追うようにして一点ずつ刻まれていた。
60. 【心臓交換】
理科室のカエルの解剖模型には、本物の心臓が入ってる──そんな噂がある。好奇心が抑えられず、放課後にこっそり侵入。模型の心臓を指で触れてみると、確かにドクッ、ドクッと小さくて早い鼓動が手に伝わってきた。だけど、指を離そうとしても体が動かない。「君のほうが良いな」声が、頭に響いた。瞬間、私の手をグーにしたくらいの心臓が模型に埋め込まれ──私の胸で、小さくて早い鼓動が鳴り始めた。
61. 【お母さんのご馳走】
最近、お母さんの料理がすごく美味しい。隠し味を聞いても「秘密よ」と笑うだけ。でも今日、掃除中にキッチンで真っ赤な手帳を見つけた。そこには私や友達の名前と、「熟成期間」という不気味なメモが。ふと冷蔵庫の奥を覗くと、先日失踪した親友のリボンが、冷たくなったお肉の塊に結ばれていた。今夜の夕食も、私の大好きなハンバーグ。お母さんが包丁を研ぎながらこっちを見ている。
62. 【ベビーモニター】
仕事中、スマホのベビーモニターで寝室の赤ちゃんを確認するのが癒やしだった。画面には、すやすや眠る娘の姿。すると、画面の外から老婆のようなしわがれた声で、優しい子守唄が聞こえてきた。妻は買い物に出ていて、家には娘一人のはず。カメラの角度を変えると、娘のベッドの真下に、真っ白な服を着た老人が潜り込んでいるのが見えた。老人はカメラに気づくと、指を口に当てて「静かに」と微笑んだ。
63. 【代わりの子】
「あなたの代わりはいくらでもいるのよ」とお母さんは口癖のように言う。テストの点数が悪かった日、お母さんに無理やり物置に連れて行かれた。そこには、私と全く同じ顔をした女の子たちが、何十人も冷たい袋に詰められて吊るされていた。「次は十五号にするわ」とお母さんが冷たく言い放つ。隣に吊るされた女の子が、一瞬だけ目を開けて「逃げて」と血の涙を流しながら私に囁いた。
一人暮らしを始め、半年。過保護な両親の大反対を押し切ったくせに、寂しさのあまり帰宅時に「ただいま」と言うのが習慣になっていた。返事なんてあるわけないのに。だけど、ある日の夜、台所から「おかえり」と母の声がした。向かうと誰もいない。「たまには一緒に野球でも見ようか」父の声もした。「いいわね」母の声。二人の声は冷凍庫からしていた。これが幻聴か。二人の死体、そろそろちゃんと処理しないとな。
52. 【百物語の終焉】
昔から、百番目の怖い話を読み終えると、本当の怪異が起こるって言われている。この短編集は、今の話でちょうど百個目。……あれ、気づかなかった?部屋の電気が急に暗くなって、窓の外が真っ赤に染まっていることに。後ろを振り返っちゃだめ。そこには、このノートを読み終えるのを百年間待ち続けた「執筆者」たちが、新しい仲間としてあなたを迎えに集まっているんだから。
53. 【新しい持ち主】
実は、このコンテストの本当の目的は「怖い話を集めること」じゃないんだ。この呪いのノートを代わりに持ち歩いてくれる「新しい持ち主」を探すための儀式だったの。最後まで読み進めたあなたは、歴代の誰よりもノートと相性が良かったみたい。おめでとう。今夜から、あなたが寝ている間に、あなたの口からこのノートの続きが吐き出され続けるよ。逃げても無駄。もう、ノートはあなたの体の一部だもの。
54. 【残り時間】
「1時間後の未来」が見えるメガネを手に入れた。これをかけてテストは百点満点を取れるようになったし、交通事故も避けられるようになった──けど、ふと鏡を見たら、1時間後の私が喉をかきむしり、目からは血の涙を流していた。メガネを外そうとしたけれど、手が麻痺して動かない。それどころか体まで。鏡の中に、私にメガネをくれたおじいさんが現れ、笑った。「こわがるほど、魂がおいしくなるんだ」残り──59分。
55. 【鏡の練習】
アイドルに憧れる私は、毎晩鏡の前で可愛い笑顔の練習をするのが日課だ。口角の上げ方一つまで完璧にする。でも、今日はおかしい。私が疲れてふっと真顔に戻ったのに、鏡の中の私だけが、まだ不自然に口角を上げたままニチャァッと笑っている。思わず固まってしまった。鏡の中の私が私の首に向かって手を伸ばしてきた。「ねえ、絶対私のほうが可愛い」
56. 【律儀な幽霊】
空っぽのエレベーターに乗り込み、私は13階を押した。だけど私が『閉』を押そうとしたとき──ダンッ!と、ナニカが押した。私以外誰も乗ってないのに。続いてダンッ!ダンッ!ダンッ!途中階が勝手に押された。2階に着いた──けど、開かずゆっくり昇っていく。ダダダッとエレベーターが揺れ続けた。まるで子供が走り回ってるみたいに。そして13階。ドアは無事開き、私は転がり出た。耳元で声がした「うちの子がすみません」
57. 【スマートスピーカーの独り言】
部屋で勉強中、スマートスピーカーが突然「そこ、座られると狭いです」と喋り出した。周りには誰もいない。「どうしたの?」と話しかけると、スピーカーは無機質な声で答えた。「あなたの椅子の背もたれと、あなたの背中の間に、髪の長い女の人が無理やり入り込んでいます」ゾッとして背後に手を回すと、体温のない冷たい指先が、私の指をぎゅっと握り返してきた。
58. 【自動販売機の指】
部活帰り、喉が渇いて自販機でジュースを買った。取り出し口に手を突っ込むと、アルミ缶の感触ではなく、ヌルリとした「人間の指」に触れた。悲鳴を上げて手を引き抜こうとしたが、その指が私の手首をガッチリと掴んで離さない。自販機の隙間から、血走った目がこちらを覗いている。「やっと、交代の人が来た」という枯れた声と共に、私は狭い取り出し口の中へと引きずり込まれた。
59. 【三拍子の足音】
音楽室のベートーベンの肖像画は、夜になると目が動くという。放課後、一人で確かめに行くと、肖像画の彼は優しく微笑んでいた。「噂なんて嘘じゃん」と笑って帰ろうとした時、背後からズシン、ズシン、と重い足音が聞こえてきた。振り返っても誰もいない。でも、床の埃には、肖像画から伸びる「三本足」の奇妙な足跡が、逃げる私の背中を追うようにして一点ずつ刻まれていた。
60. 【心臓交換】
理科室のカエルの解剖模型には、本物の心臓が入ってる──そんな噂がある。好奇心が抑えられず、放課後にこっそり侵入。模型の心臓を指で触れてみると、確かにドクッ、ドクッと小さくて早い鼓動が手に伝わってきた。だけど、指を離そうとしても体が動かない。「君のほうが良いな」声が、頭に響いた。瞬間、私の手をグーにしたくらいの心臓が模型に埋め込まれ──私の胸で、小さくて早い鼓動が鳴り始めた。
61. 【お母さんのご馳走】
最近、お母さんの料理がすごく美味しい。隠し味を聞いても「秘密よ」と笑うだけ。でも今日、掃除中にキッチンで真っ赤な手帳を見つけた。そこには私や友達の名前と、「熟成期間」という不気味なメモが。ふと冷蔵庫の奥を覗くと、先日失踪した親友のリボンが、冷たくなったお肉の塊に結ばれていた。今夜の夕食も、私の大好きなハンバーグ。お母さんが包丁を研ぎながらこっちを見ている。
62. 【ベビーモニター】
仕事中、スマホのベビーモニターで寝室の赤ちゃんを確認するのが癒やしだった。画面には、すやすや眠る娘の姿。すると、画面の外から老婆のようなしわがれた声で、優しい子守唄が聞こえてきた。妻は買い物に出ていて、家には娘一人のはず。カメラの角度を変えると、娘のベッドの真下に、真っ白な服を着た老人が潜り込んでいるのが見えた。老人はカメラに気づくと、指を口に当てて「静かに」と微笑んだ。
63. 【代わりの子】
「あなたの代わりはいくらでもいるのよ」とお母さんは口癖のように言う。テストの点数が悪かった日、お母さんに無理やり物置に連れて行かれた。そこには、私と全く同じ顔をした女の子たちが、何十人も冷たい袋に詰められて吊るされていた。「次は十五号にするわ」とお母さんが冷たく言い放つ。隣に吊るされた女の子が、一瞬だけ目を開けて「逃げて」と血の涙を流しながら私に囁いた。
