金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「実は5月にエリザベート王立国際音楽コンクールのヴァイオリン部門に挑戦します。師匠の仇討です」

「エリザベートと言えば世界3大コンクールの1つだろ」

「はい。もしも僕がファイナルで入賞したら、調律を教えていただけますか」

「はあ!? 寝言は寝て言え。ふざけやがって」

彼は俺がガタッと荒々しく立ち上がったのを観ても、顔色1つ変えず平然としていた。

「寝言は言いませんし、ふざけてもいません。僕はエリザベートのファイナルを勝ち取りにいきます」

真剣な眼差しに吸い込まれるように、思わず「解った」と答えてしまった。

「では、コンクールの結果後に伺います」

彼は穏やかに笑って席を立った。

「ピアニスト周桜宗月の息子が、何でエリザベートコンクールのヴァイオリン部門に……」

腑に落ちない。

「お父さん、知らないの? 『詩月』ーーケルントナー通りのヴァイオリン王子」







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