金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

chapter2ーー寝息の傍らで

3人でピザを食べ終え「ごちそうさま」と言った後、詩月がスッと席を立った。

カウンターに無言で歩いていくと、マスターに声をかけた。

「お水を1杯」

マスターは特に何も言わずに、カウンターに水の入ったコップを置いた。

詩月は数種類の薬を一気に水で流し込んだ。

「体調はどうなんだ? 先月より種類が増えていないか」

「うん。増えてはいないけれど、2種類変更になった後発品(ジェネリック)が出て」

「そうか。修士課程を終えた後はどうするんだ?」

「OFFERがたくさん来ていて検討中。調律師の学校がまだ1年あるから、ちゃんと単位を取得して資格を取るよ」

「で、その先は」

「ずっとウィーンを拠点にするつもりはないんだ。体のこともあるし、できる限り日本を、横浜を拠点にして活動したいし、調律師の資格も活かしたい」

「ユリウスやエィリッヒ、それに宗月ともよく相談するんだぞ」
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