君の隣で、私になれた
ーー居酒屋近くの駐車場。
湊さんの黒い車を見つける。
「いた」
そっちに向かう。
少し離れた場所。
助手席のドアは開いたまま。
莉桜は外に立っていた。
バッグを両手で握り締めたまま。
肩が小さく震えている。
……何だ。
あの空気は。
足が止まる。
湊さんの声が聞こえる。
「昨日、何て言った?」
静かな冷たい声だった。
怒鳴っていない。
なのに。
背筋が冷えた。
「……もう同じことしない」
「違う」
「……」
「俺が聞いてるのは答えじゃない」
「確認してる」
「昨日、何て言った?」
「……考えるって」
「そう。じゃあ今日は考えた?」
「……」
「返事」
「……できてなかった」
「できてなかった?それで終わり?」
莉桜は俯く。
「顔」
返事をしない。
「こっち見て」
少し間があく。
「莉桜」
「……うん」
「違う」
「……はい」
「そう。最初からそれで言え」
俺は息をのんだ。
……何だよ今の。
莉桜の返事を直した?
「じゃあ何が悪かった?」
「……分からない」
「分からないじゃなくて考えろ」
湊さんはため息をつく。
「昨日も言ったよね」
「……うん」
「違う」
「……はい」
「俺がさっき教えたこともう忘れた?」
「ごめんなさい…」
「で、何が悪かった?」
莉桜の声が震える。
「……湊が嫌がることをした」
「それだけ?」
「……」
「まだある、ちゃんと考えて」
沈黙。
「だから返事」
「……はい」
「そう。最初からそう言え」
俺の手に力が入る。