君の隣で、私になれた

第31話「それだけで幸せ」



ーーー大学4年の晩夏。

ーー莉桜side.



ホテルのナイトプール。

夜風が少しだけ涼しい。

ライトアップされた水面が揺れていた。



「綺麗……」

思わず声が漏れる。


湊が笑った。

「気に入った?」

「うん。すごく。」


ゆっくり水に入る。

照明が水面に映って。

まるで別世界みたいだった。


「……」

少しだけ恥ずかしくなる。



湊が選んでくれた水着。

くすみピンクのクロスホルター。

可愛い。

でも少し大人っぽい。



湊は少し黙ったまま私を見つめた。

視線がゆっくりと私を追う。

水着。

髪。

照れた表情。

そしてもう一度目が合う。


「……」

「な、なに?」

湊は小さく笑う。

「似合ってるよ」

そのまま前髪を耳にかけるように髪に触れる。

指先が頬をかすめる。


「莉桜に着てほしいと思って選んだから」

「……っ」

「正解だった」

思わず顔が熱くなる。


「恥ずかしい……」

「今更?」

笑う湊。

「もう全部知ってるのに」

「そういうことじゃない!」

思わず笑いながら返す。

湊も笑う。


照れて胸元を隠そうとすると。

湊は私の手をそっと下ろした。

「ちゃんと見せて」

「本当に似合ってる」


照れながら。

私は小さく頷いた。

「ありがとう」

湊は少し嬉しそうに笑う。

「こちらこそ」



少し泳いで。

二人で水に浮かぶ。



周りの話し声も。

音楽も。

遠くに聞こえる。



「最近……全然会えなかったね」

私が言う。


湊は少し苦笑した。

「ごめん、実習で余裕なくて」

「ううん。」

「頑張ってるの知ってるから。」

「だから今日来れて嬉しい」


湊は何も言わず。

私の手をそっと握った。


前みたいな強さじゃない。

優しく。

確かめるように。


私も握り返す。


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