君の隣で、私になれた


時計を見る。

もうすぐ日付が変わる。



「結構飲んだな」

新が缶を置く。

「えーー!」

紅羽が両手を上げる。

「まだまだいけるでしょ!」

「お前が一番酔ってる」

新が苦笑する。


「それと…」

「お前ら浴衣。気をつけろ」

「え?」

紅羽と莉桜が同時に首を傾げる。


見ると2人とも。

座ったり笑ったりしているうちに。

浴衣が少しだけ着崩れていた。


「俺らはラッキーだけどな、新」

「一緒にするな」

即答。

「あー変態ー!」

紅羽が笑いながらクッションを投げてくる。

でも、浴衣はそのまま。


「おい、酔っ払い!」

俺は紅羽の方へ体を向ける。

乱れた襟元を整えて。

裾も軽く直す。

その時に身体に手が触れる。


「ありがとー!」

紅羽は気にする様子もなく笑う。

俺も紅羽も気にしない。


「次…」

そのまま自然と莉桜へ向く。

「ほら、莉桜も──」

襟元へ手を伸ばす。


その瞬間。

「……」

止まる。

少しだけ乱れた浴衣。

お酒も飲んで赤くなった頬。

ぼんやりした表情。


「ん?」

紅羽が不思議そうに俺を見る。

「琉生?どうしたの?」

「……いや。」

我に返る。

できるだけ莉桜に触れないように。

そっと襟元だけ整える。

「はい、これでよし 」

「ありがと……」

莉桜は少し眠そうに笑った。


その笑顔を見て。

また一瞬だけ。

胸の奥がざわつく。


「お前…」

新がこっちを見る。

「相変わらず距離感バグってるな」

「え?褒めてる?」

「褒めてない」

部屋に笑い声が広がる。


笑いながら。

もう一度だけ莉桜を見る。


「……。」



さっき。

なんで手が止まった?


紅羽のときは。

何も考えなかった。

しかも紅羽の方が着崩れてた。


なのに。

莉桜は直そうとしただけで。

一瞬。

体が動かなかった。


……なんで?


理由が分からない。

酒のせいか?

いや、違う気がする。


考えても答えは出なかった。


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