君の隣で、私になれた


ーー琉生side.


帰り道。

夜の高速道路。


車内には。

音楽だけが流れていた。


「なんか……こうやって莉桜と2人で」

「車乗ってるの不思議だな」

ふと思ったことを口に出す。

「え?」

「前だったら考えられなかった」


莉桜が少し笑う。

「たしかに。絶対なかったね」

そして少しだけ窓の外を見る。


「……別れた直後はやっぱ落ち込んだ」

「後悔した日もあったし、」

「これでよかったのかなって」

静かな声。

ハンドルを握る手に。

少しだけ力が入る。



聞かなかった。

聞けなかった。

あの日のこと。


俺が踏み込んでいい話じゃない。

そう思ってたから。



「でも、今は」

「良かったこともいっぱいある」

「……。」

「みんなと大学の頃できなかったこと」

「今になって取り戻してるみたいで」

少し笑う。

「すごく楽しい」

その笑顔を見て俺も笑った。


少し前まで。

あんなに苦しそうだったのに。


今はちゃんと笑えてる。


「そっか」

少し間を空ける。

「別れたのが良かったとは思わない」

「でも紅羽みたいに…」

「気軽に莉桜とも会えるようになった」

「それが俺は嬉しい」


本音だった。

もう隣に誰かいることを気にして。

距離を測らなくていい。


それだけで十分嬉しかった。



「だから。」

「また暇なとき誘っていい?」


少しだけ返事を待つ。

「うん。誘ってくれたら嬉しい」

迷いのない返事。

思わず口元が緩んだ。


「今日ほんとに楽しかった」

「ありがとう」


その一言だけで十分だった。



少しして俺が口を開く。

「そういえば。」

「あれから湊さんとは?」


一瞬だけ。

空気が静かになる。


聞いていいのか少し迷った。

でも今なら聞ける気がした。


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