君の隣で、私になれた
その後。
「ちょっとお手洗い行ってくる!」
莉桜を待ってる間。
1人で大水槽を眺める。
魚がゆっくり泳ぐ。
後ろから。
「ねぇ、かっこよくない?」
「ほんとだ、めっちゃイケメン」
女子2人の声。
聞こえてる。
前までなら振り向いて笑いかけてた。
でも今は聞こえてないふりをする。
数分後。
「ごめん、おまたせ!」
俺の腕へ。
ぎゅっと掴まってくる莉桜。
自然に腕を組まれる。
思わず目を見開く。
「……。」
「琉生?どうしたの?」
「いや。」
少し笑う。
「おかえり」
頭をぽん。
少し照れたように笑う莉桜。
後ろでは。
「え、彼女可愛すぎない?」
「すっごい美男美女……。」
小さく聞こえた。
……。
莉桜って彼氏にはこんな感じなんだ。
無理。
可愛すぎる。
ーー外へ出る。
夏の日差し。
「暑ーっ!」
首元をぱたぱた仰ぐ。
「今日も暑いね」
そう言って莉桜が近付く。
ハンカチ。
首元の汗を優しく拭く。
「ほら反対も」
「……。」
言われるがまま。
少しだけ顔を向ける。
また汗を拭く。
「はい。」
「……ありがと」
「どういたしまして」
莉桜はにこっと笑う。
……世話焼き。
こんなん反則だろ。
ーー駐車場まで。
恋人繋ぎ。
繋いだ手を見て。
莉桜がふふっと笑う。
「……彼氏っぽい」
「だから彼氏」
「そっか」
少し照れてまた笑う。
「琉生の彼女になれて嬉しい」
あまりにも。
当たり前みたいに言うから。
一瞬、言葉が出なかった。
……。
さすがに愛おしすぎる。
俺は笑って誤魔化す。
「そんな可愛いこと言ってくれんの?」
「大好きじゃん」
少し冗談っぽくそう返した。
「うん、大好き」
迷いなく言う。
「……。」
今度は本当に。
何も返せなかった。
顔が熱い。
笑うしかない。
前を向いたまま小さく。
「……俺も」
そう呟くのが精一杯だった。