君の隣で、私になれた
ーー2週間後。
バイトおわり。
今日も湊の車で送ってもらってる。
「疲れた?」
湊が聞く。
「ちょっとだけ」
少し笑って答える。
講義もあったし。
バイトもあった。
「そっか」
湊は笑う。
でも。
「今日泊まる?」
私は一瞬迷う。
明日も1限から。
レポートもまだ残っている。
「今日は帰ろうかな」
そう言った瞬間。
湊の手が止まる。
運転席。
ハンドルを握っていた指先が小さく動く。
赤信号。
車が止まる。
湊がこちらを見る。
「なんで?」
「レポート終わってなくて…」
「でも昨日も会ってないよね」
「うん」
「俺会いたかったんだけど」
私の視線を落とす。
その瞬間。
湊の手が伸びる。
その手は私の耳に触れる。
「ごめん」
「またそれ」
そのまま頬に触れる手。
優しい動作。
「最近多くない?」
「え?」
「断るの」
頬に触れる手が私の顔を上げる。
自然と目が合う。
「そんなつもりじゃ…」
「じゃあどういうつもり?」
静かな低い声。
「俺が重い?」
「違う」
「面倒?」
「違う」
「じゃあ何?」
答えられない。
信号が青になる。
車が走り出す。
でも。
湊の手はすぐには離れない。
親指が頬をなぞる。
「じゃあ泊まれるよね?」
逃げ道がなくなる。
「……うん」
その瞬間。
「よかった」
湊が安心したみたいに笑う。
そして。
赤信号。
また車が止まる。
今度は頭を撫でる。
「素直な莉桜が1番可愛い」
子供を褒めるみたいな口調。
そして私の頭を自分の方へ寄せる。
そのまま軽いキス。
「分かった?」
「…うん」
満足そうに笑う湊。
車はまた走り出す。
窓の外を見る。
湊は優しい。
本当に優しい。
なのに。
どうしてだろう。
時々、息が苦しくなる。