Hidden love.
 渋々、航平と檜山さんの席の近く、二人席に向かい合って着席すると、「なあ、結婚の事考えてくれた?」と結構な声量で問いかけられ、思わず咳込んだ。

 結婚? なんの話?

 そう問いかけようとすると、大樹は私に有無を言わせないように、にっこりと微笑み、まっすぐに見つめてくる。

 話を合わせろという様に、「俺は本気だよ。あの日再会出来たのは運命だと思ってる」と、穏やかな優しい声で話し続ける。

 私は唖然としたまま大樹の方を見ていると、テーブルに置いていた私の手の上に手を置く。


「どうやったら本気って信じてくれる? 毎日薔薇の花束持ってプロポーズする?」

「な、な、何言って…」

「動揺してるところも可愛い。もっと困らせたくなるな」


 クスクスと笑いながら零される、甘ったるい声に言葉。大樹が何を考えているのか、本当にわからなくて混乱する。

 不意に航平の方へ目をやると、鋭い目つきでこちらを睨みつけている。きっと航平は、私が社長に口説かれている状況が気に食わない。自分より、地位が高くなることが許せない。

 溜息を吐き、この場で返す言葉を考えた。今ここで大樹の言葉を真正面から拒めば、プライドを傷つけてしまう。だから、「後で話しましょう」と返した。
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