レディ・マーメイド
人魚姫
次の日も、樹莉は神谷に見送られ、黒木の車でパレ・ド・フローラに送ってもらった。
「黒木さん、ありがとうございました。仕事中は他のスタッフもそばにいるので大丈夫です。亜紋さんのところに戻ってください」
車を降りてそう言うと、黒木は「いや」と首を振る。
「亜紋さんに締め上げられたくないし、ここにいる方が亜紋さんにこき使われなくていいんだ」
「そのセリフ、亜紋さんに聞かせられませんね」
「そう。だから内緒で」
「ふふっ。でも昨日の婚活パーティーでウッディーさんとして顔を覚えられてしまったから、バンケットスタッフに会わない方がいいと思います」
「そうだな、気をつけるよ」
なるべく離れたところでひっそりと樹莉を見守りつつ、コースターの行方についても考えているようだった。
昼休みになると樹莉は黒木と一緒に外に出て、すぐ近くのカフェに入った。
ピザやリゾットをシェアして食べながら、やはり話題はコースターのことになる。
「黒木さんは、コースターにつけたワインの染みが、犯人同士の目印だったんじゃないかっておっしゃってたでしょう?」
「たとえば、の話だけどね。ペンで印をつけるよりは自然かと思って。なにか思い出した?」
周りを気にするうちに、いつしか黒木は樹莉にくだけた口調で話すようになっていた。
「少しなんですけど……。あのパーティーで、5枚くらいコースターを交換した記憶があります。私はあの時バンケットホールの後方を担当していて、壁際のテーブルを見て回っていました。主に、正面に向かって右側です」
黒木は大きく頷く。
「俺と亜紋さんが睨んでいる二人も、後方の右側にいたんだ」
「そうなんですね。それでその時に交換したコースターの中には、水で濡れたものやワインの染みがついたもの、どちらも2、3枚あったと思います」
「その交換したコースターは、バックヤードのゴミ箱に?」
「はい。一旦ベストの左ポケットに入れて、バックヤードで取り出して裏面も確認してから捨てました」
「ベストのポケットには残っていなかった?」
「何度も確認しましたが、ありませんでした。ロッカーの中も、カバンの中も……。新しいコースターを置いてある在庫の棚もチェックしましたが、やっぱりありませんでした」
そうか、と黒木は視線を落とす。
「それならやはり、もう既に捨てられて燃やされているね。それか犯人が持っているか。つまりコースターに隠された秘密は俺達には暴けない。あとは、樹莉さんを守るだけだ」
「すみません、お力になれなくて」
「とんでもない。こちらの勝手で樹莉さんを巻き込んでしまって、本当に申し訳ない。必ず俺達が守るから」
「はい、ありがとうございます」
ようやく笑顔で頷き合った。
「黒木さん、ありがとうございました。仕事中は他のスタッフもそばにいるので大丈夫です。亜紋さんのところに戻ってください」
車を降りてそう言うと、黒木は「いや」と首を振る。
「亜紋さんに締め上げられたくないし、ここにいる方が亜紋さんにこき使われなくていいんだ」
「そのセリフ、亜紋さんに聞かせられませんね」
「そう。だから内緒で」
「ふふっ。でも昨日の婚活パーティーでウッディーさんとして顔を覚えられてしまったから、バンケットスタッフに会わない方がいいと思います」
「そうだな、気をつけるよ」
なるべく離れたところでひっそりと樹莉を見守りつつ、コースターの行方についても考えているようだった。
昼休みになると樹莉は黒木と一緒に外に出て、すぐ近くのカフェに入った。
ピザやリゾットをシェアして食べながら、やはり話題はコースターのことになる。
「黒木さんは、コースターにつけたワインの染みが、犯人同士の目印だったんじゃないかっておっしゃってたでしょう?」
「たとえば、の話だけどね。ペンで印をつけるよりは自然かと思って。なにか思い出した?」
周りを気にするうちに、いつしか黒木は樹莉にくだけた口調で話すようになっていた。
「少しなんですけど……。あのパーティーで、5枚くらいコースターを交換した記憶があります。私はあの時バンケットホールの後方を担当していて、壁際のテーブルを見て回っていました。主に、正面に向かって右側です」
黒木は大きく頷く。
「俺と亜紋さんが睨んでいる二人も、後方の右側にいたんだ」
「そうなんですね。それでその時に交換したコースターの中には、水で濡れたものやワインの染みがついたもの、どちらも2、3枚あったと思います」
「その交換したコースターは、バックヤードのゴミ箱に?」
「はい。一旦ベストの左ポケットに入れて、バックヤードで取り出して裏面も確認してから捨てました」
「ベストのポケットには残っていなかった?」
「何度も確認しましたが、ありませんでした。ロッカーの中も、カバンの中も……。新しいコースターを置いてある在庫の棚もチェックしましたが、やっぱりありませんでした」
そうか、と黒木は視線を落とす。
「それならやはり、もう既に捨てられて燃やされているね。それか犯人が持っているか。つまりコースターに隠された秘密は俺達には暴けない。あとは、樹莉さんを守るだけだ」
「すみません、お力になれなくて」
「とんでもない。こちらの勝手で樹莉さんを巻き込んでしまって、本当に申し訳ない。必ず俺達が守るから」
「はい、ありがとうございます」
ようやく笑顔で頷き合った。