レディ・マーメイド
「まあ、樹莉さま!」

ロイヤルクレストのロータリーで車を降りると、驚いたように神谷が駆け寄って来た。

「樹莉さま、ようこそ! ああ、またお会いできるなんて嬉しくて」
「私もです、神谷さん。突然来てしまってごめんなさい」
「いつでも大歓迎ですわ。さあ、中へどうぞ」

そそくさと樹莉を案内する神谷に、亜紋は苦笑いする。

「やれやれ、俺は眼中にナシか」

すると黒木がトランクからスーツケースを下ろしながら笑った。

「私には見えておりますよ、亜紋さん。お帰りなさい」
「黒木、俺は幽霊じゃない」

4人で賑やかにペントハウスのリビングに行き、神谷が早速紅茶を淹れた。

「樹莉さま、どうぞ。亜紋さまも」
「俺はオマケだな」
「樹莉さま、今夜は泊まっていかれるのでしょう?」
「……って、聞こえてないな」

神谷と亜紋のやり取りに苦笑し、樹莉は亜紋に尋ねる。

「亜紋さん、泊まってもいいですか?」
「もちろん」
「よかった。じゃあ、お邪魔します」

神谷がウキウキと夕食の準備をし、ダイニングテーブルに料理を並べた。

「せっかくだから4人で食べよう。神谷も黒木も座れ」

促されて神谷が樹莉の隣に、黒木は亜紋の隣に座る。

4人はシャンパンで乾杯した。

「はあ、美味しい。樹莉さまとお酒が飲めるなんて、とても嬉しいです」

うっとりと頬に手を当てる神谷は、樹莉にばかり話しかける。

どうやら亜紋は樹莉との会話を我慢していたらしく、夕食が終わると有無を言わさず樹莉を散歩に連れ出した。
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