いじわるな指先に惑わされる恋なんてしたくないです!
「蓮見、明日の飲み会行く?」

結局、宇佐美さんが車で送ってくれるというので一緒にエレベーターに乗り込んだ。5階のオフィスから、駐車場へはこのまま地下に行くことが出来るから。

「一応、行く予定です」

「予定?」

「はい…、仕事が滞りなく終わったら行きます」

「いいよ、明日はコピー頼まないから」

「……。」

明日は会社の飲み会、たまーにあるけどあんまり気乗りしなくて。だけど断れないからなんだかんだ出席してる。

「行きたくないんだ?」

「……。」

「めんどくさいもんな、会社の飲み会とか」

「いえっ!めんどくさいからってわけじゃないんですけど…」

ぺたっとエレベーターの壁に背中をつけた、ふぅーっと息を吐いてちょっとだけ視線を落として。

「…あんまりお酒得意じゃないので」

飲めないわけじゃないけどすぐに顔が赤くなるから、ふわふわする気分もいいとは思えなくて。
ついでにおいしいともあまり思えないから飲みたいとも思わない。

「でも飲まないとちょっと雰囲気悪くなるじゃないですか」

「おじさんはお酒好きだからねぇ」

「だからあの雰囲気苦手なんですよね」

強要されるわけじゃないけど、明らかにがっかりされるのは目に見えてわかる。それも申し訳なくなってしまって。

「だから…」

「蓮見」

「はい?」

何気なく、名前を呼ばれたから隣を向いた。

だけどその瞬間、ふと手が伸びてきたから。


白くて細くて長い指先が私の頬に、とんっと…


「髪の毛ついてる」


たぶん一瞬、ほんの一瞬。
触れたから触れないかだってわからないぐらいだったのに。


一気に胸が騒ぎ出して、頬が熱くなるー…


「何その顔、誘ってんの?」

「さ、誘ってないです!」

目の前にその手しか見えなかったから、つい視線を奪われるように見てしまって…


最悪だ、最悪!またからかわれる!


だってほら、にこって笑ってるもん宇佐美さん。

「全く誘ってないですからね!」

でも心臓がうるさい、エレベーター中に聞こえてるんじゃないかってぐらいドキドキしてる。
お酒を飲んだ時より顔が熱かった。
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