限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 お仕事が忙しいのに、悪いことをしてしまった。けど、こういう行動にも彼の愛情を感じて、心が温かくなる。

「……え?」

 視線を正面に戻した私はとある人物を前にして、思考停止してしまった。彼がこんな場所に居るなんて、全く思いもしていなかったからだ。

「ん? ローレン。知り合いか? あの人は……かなり、顔色が悪いようだ。倒れそうじゃないか?」

 イーサンの言葉の通り、頼りない足取りで周囲を見回していた彼の体はぐらりと傾いだ。

「っ……! お父様!」

 思わず彼を呼んだ声が、悲鳴のようでもあった。私が走って駆けつけると、お父様は焦点の合わない目つきでクインの名を呼んでいた。

「クインが……クインが居ないんだ……連れて行かれた。どこにも居ない。僕の息子なんだ」

「……クインが? 居なくなったって……お父様? どういうことなの?」

 今は弟クインは、貴族学校へ通っている時間のはずだ。だから、お父様がここでクインを探しているのはおかしい。もしかしたら、お酒を飲み過ぎて錯乱状態になっているのかもしれない。

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