限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。
 背後から聞こえて来た低い声に、私はもう驚かなかった。彼は私の行く先を知っていたり先回りしていたりが、このところ目に見えて増えたからだ。

 前々から、そうだったのかもしれない。ギャレット様は嘘が下手だから。

「ギャレット様。ごきげんよう……そうですね。はい。彼女には、以前お会いしたことがありまして……」

 自分でも無理な笑顔になってしまっているのだけど、ギャレット様はふうと息をついて頷いた。

「そうか。バイロン家はあまり俺を良く思っていない。あまり、近付かない方が良い」

「えっ……っと、そ……そうなんですか?」

 ギャレット様は王妃様が彼と結婚させようと企んでいるバイロン伯爵家ペルセフォネ嬢を、要注意人物として捉えているようだ。

「あれは、義母上の姪なんだが、バイロン家は弟のアイゼアを擁立したいと考えている。俺の母の実家バルレッタ家と、宮廷でも激しく対立している。俺のことが、とにかく邪魔なんだ」

「そうですか……知らなくて、驚きました」

 ええ。本当に。

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