君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
複雑

綻びの予感

それから、二学期が始まってしばらく経ったある日のこと。

放課後、美波に「あらたまって話があるから、今日の帰り、どこかで聞いてほしい」と真面目な顔で頼まれた。
いつも明るい美波がそんなトーンで話すなんて珍しい。

場所を私の家に移し、自室の床に座ると、美波はそわそわと膝を抱え込んだ。

「柚那……どうしよう。私、勇斗のこと好きかもしれない」

「えっ!? 本当に!?」

まさかの言葉に、私は思わず声を上げて身を乗り出した。
夏休み中も四人で楽しく過ごす中で、美波は勇斗を男の子として意識し始めていたらしい。

「いつから……!? でも、なんで『どうしよう』なの?」

美波は困ったように苦笑いをして、視線を落とした。

「だって勇斗、私の気持ちに全然気づいてないし……あいつ、あからさまに脈ナシっぽいんだよね」

美波の寂しそうな横顔に、胸がキュッとなる。
どうにかして応援してあげたい。私は純粋にそう思った。

「まだ分からないじゃん! 恋なんてこれからだよ!! 私、全力で応援するから!」

私の言葉に、美波は拳をぎゅっと握りしめて頷いた。

その夜、部屋でくつろいでいると、勇斗からLINEが届いた。

『いきなりごめん。美波のことで、聞いてもらいたいことがあって』
『柚那、美波から何か話聞いてたりする?』
『正直、めちゃくちゃ戸惑ってて……友達としてはすごく良い奴だし、傷つけるのも嫌でさ』

勇斗は本当に誠実で、優しい男の子だ。
真っ直ぐな美波の想いに、どう返事をしていいのか困っているんだろう。

私はすぐに返信を打った。

『うん、少しだけ聞いてるよ! まあ最終的に決めるのは勇斗だけど、あんまり深く考えすぎずに、一回流れに任せてみてもいいんじゃない?』

それから翌日のお昼休み。
お弁当を広げようとすると、美波が息を切らして駆け寄ってきた。

「柚那……! 私、勇斗に告白した……!」

「えっ!? 展開早すぎない!?」

美波は頬を真っ赤にして、幸せそうにはにかんだ。

「あのね、勇斗、最初は『まだ考えられない』って言ってたんだけど……」

「……え?」

「柚那が『流れに任せてみたら』って勇斗に言ったのが響いたみたいでね! 私、勇斗に『柚那もそう言ってるし、とりあえず付き合ってみようよ!』って、もう一度だけ食い下がったの!」

(……私の言葉が、勇斗の背中を押したの?)

自分の言葉で美波の恋が叶ったことは嬉しいはずなのに、なぜかほんの少しだけ、胸の奥がチクッとした気がした。

「よかったね、美波! おめでとう!」

私は心からの笑顔で、美波の肩をポンと叩いた。

その日の夜、グループLINEに通知が並んだ。

美波:『みんなに報告! 勇斗と付き合うことになりましたー!』
勇斗:『そういうことだから、よろしく』

美波の弾むような言葉に対して、勇斗の返信はあまりに短かった。
おめでたい報告なのに、どうしてか少しだけそっけなく感じて、私は画面を見つめたまま一瞬だけ瞬きをした。

けれど、すぐに新太から『グループ見た!? あいつらマジか!』と興奮気味のLINEが届き、私はその違和感を胸の奥に押しやって、スマホを握りしめた。

翌日の帰り道、夕焼けに染まる道を新太と並んで歩く。

「よかったな。あいつら絶対お似合いだよ」

新太の言葉に、私も「うん、よかった!」と笑顔で頷いた。

大好きな友達が結ばれた喜びと、隣にいる新太の優しい横顔。

この穏やかで愛おしい日々が、ずっと続いてほしい。
私は新太のぬくもりを隣に感じながら、心の底からそう願っていた。
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