君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
見えない距離
『勇斗、ごめん。なんかもう、どうしたらいいか分かんなくなっちゃって……』
送信すると、すぐに画面が切り替わって彼からの返信が届いた。
(( LINEじゃ大変だから電話しよう ))
直後、スマホが細かく震えて勇斗からの着信を知らせる。画面をスワイプして耳に当てた。
「……もしもし」
極力普通を装って、どうにか絞り出した声。だけどどうしても震えを隠しきれなくて、小さく鼻をすする音が漏れてしまう。
すると、受話器の向こうから聞こえてきた勇斗の声は、いつもの少し低いトーンのまま、ひどく真剣だった。
「どうしたんだよ。……泣いてんじゃん、なにがあった?」
心配そうな勇斗の声を聞いた瞬間、堪えていた涙がまたじわっと溢れそうになる。
私はさらに鼻をすすりながら、今日、美波と新太の誕生日プレゼントを買いに行ったこと、そのとき感じた苦しさを、ぽつりぽつりと勇斗に打ち明けた。
すべてを聞き終えた勇斗は、少しの間をおいてから、ふぅと小さくため息をついた。
「なるほどな……。美波に悪気がないのは分かるけど、でも、それは柚那がモヤモヤして当然だよ。彼女である柚那を連れてプレゼントを選びに行くなんて、普通に考えて柚那が可哀想すぎるだろ。お前が優しすぎるから、断れなかったんだな」
勇斗は少し声を落として、どこか切なそうに、だけど語りかけるように言葉を続ける。
「柚那の感覚は、何一つおかしくないよ。俺だって、そんなの自分の大切な人がされてたら普通に嫌だし。……一人でそんなに泣くまで我慢するなよ」
勇斗の口から語られる、真っ直ぐで優しい言葉。
胸のモヤモヤが完全に消えたわけではないけれど、勇斗がこうして私の話を真っ直ぐに受け止めてくれるだけで、強張っていた心が少しずつ解けていくのが分かった。
「……勇斗、ありがとう。話を聞いてもらったら、少し落ち着いた。とりあえず美波のことはそっとしておいて、新太に話せそうだったら、今度話してみるね」
「おう。あんまり一人で抱え込むなよ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
けれど、そんな出来事があった後も、結局私は新太に何も話すことはできなかった。
美波とのこれまでの関係もあるし、なにより、大好きな新太のことを疑っているなんて思われたくなくて、どうしても言葉にできなかった。
私が一言伝えて、もし新太を困らせてしまったらーーそう思うと、やっぱり私が我慢するしかないんだと、胸の奥に気持ちをぎゅっと押し殺すしかなかった。
その日を境に、美波との間にはなぜか、目に見えない距離ができてしまった。
美波に悪気がなかったのは分かっている。だから私も、変に気まずくならないよう、今まで通り普通に接しているつもりだった。
だけど、気づけば美波の方から、少しずつ私を避けるようになっていった。
私が何か気に障ることをしてしまったのかな。それともあの買い物のとき、私がうまく笑えていなかったことに気づかせてしまったのかな……。
本当の理由は分からないまま、学校の廊下ですれ違っても、美波はスッと視線を外してしまう。
以前のように親しく話すことは無くなっていき、あんなに毎日4人で笑い合っていた日々が、まるで遠い過去のことのように思えた。
そしてしばらくして、美波は一緒に続けていた部活も、突然辞めてしまった。
彼女に何があったのか、今の私にはもう、尋ねる勇気すら残されていなかった。
送信すると、すぐに画面が切り替わって彼からの返信が届いた。
(( LINEじゃ大変だから電話しよう ))
直後、スマホが細かく震えて勇斗からの着信を知らせる。画面をスワイプして耳に当てた。
「……もしもし」
極力普通を装って、どうにか絞り出した声。だけどどうしても震えを隠しきれなくて、小さく鼻をすする音が漏れてしまう。
すると、受話器の向こうから聞こえてきた勇斗の声は、いつもの少し低いトーンのまま、ひどく真剣だった。
「どうしたんだよ。……泣いてんじゃん、なにがあった?」
心配そうな勇斗の声を聞いた瞬間、堪えていた涙がまたじわっと溢れそうになる。
私はさらに鼻をすすりながら、今日、美波と新太の誕生日プレゼントを買いに行ったこと、そのとき感じた苦しさを、ぽつりぽつりと勇斗に打ち明けた。
すべてを聞き終えた勇斗は、少しの間をおいてから、ふぅと小さくため息をついた。
「なるほどな……。美波に悪気がないのは分かるけど、でも、それは柚那がモヤモヤして当然だよ。彼女である柚那を連れてプレゼントを選びに行くなんて、普通に考えて柚那が可哀想すぎるだろ。お前が優しすぎるから、断れなかったんだな」
勇斗は少し声を落として、どこか切なそうに、だけど語りかけるように言葉を続ける。
「柚那の感覚は、何一つおかしくないよ。俺だって、そんなの自分の大切な人がされてたら普通に嫌だし。……一人でそんなに泣くまで我慢するなよ」
勇斗の口から語られる、真っ直ぐで優しい言葉。
胸のモヤモヤが完全に消えたわけではないけれど、勇斗がこうして私の話を真っ直ぐに受け止めてくれるだけで、強張っていた心が少しずつ解けていくのが分かった。
「……勇斗、ありがとう。話を聞いてもらったら、少し落ち着いた。とりあえず美波のことはそっとしておいて、新太に話せそうだったら、今度話してみるね」
「おう。あんまり一人で抱え込むなよ」
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けれど、そんな出来事があった後も、結局私は新太に何も話すことはできなかった。
美波とのこれまでの関係もあるし、なにより、大好きな新太のことを疑っているなんて思われたくなくて、どうしても言葉にできなかった。
私が一言伝えて、もし新太を困らせてしまったらーーそう思うと、やっぱり私が我慢するしかないんだと、胸の奥に気持ちをぎゅっと押し殺すしかなかった。
その日を境に、美波との間にはなぜか、目に見えない距離ができてしまった。
美波に悪気がなかったのは分かっている。だから私も、変に気まずくならないよう、今まで通り普通に接しているつもりだった。
だけど、気づけば美波の方から、少しずつ私を避けるようになっていった。
私が何か気に障ることをしてしまったのかな。それともあの買い物のとき、私がうまく笑えていなかったことに気づかせてしまったのかな……。
本当の理由は分からないまま、学校の廊下ですれ違っても、美波はスッと視線を外してしまう。
以前のように親しく話すことは無くなっていき、あんなに毎日4人で笑い合っていた日々が、まるで遠い過去のことのように思えた。
そしてしばらくして、美波は一緒に続けていた部活も、突然辞めてしまった。
彼女に何があったのか、今の私にはもう、尋ねる勇気すら残されていなかった。