君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
理想の影
「そんなことがあったなんて、知らなかった……。私のために勇斗は新太と話してくれたのに、そんなことになっちゃって……本当に申し訳ないよ……」
私が小さく呟くと、明里は切なそうに目を伏せた。
「勇斗は自分が新太と喧嘩したことよりも、自分のせいで新太と柚那が別れることになってしまったんじゃないかって、すごく気にしてたんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に、新太と別れることになったあの日の記憶が鮮明にフラッシュバックした。
『勇斗……。とりあえず……今日、新太と一緒に帰ることになってる』
無理に笑顔を作ってそう告げた私に対して、あの時の勇斗は眉を深くひそめ、何か言いたげに口を開きかけていた。
(あの時の勇斗の顔……。そういうことだったんだ……っ)
自分が新太を怒らせてしまったせいで、私たちが別れることになったんじゃないか。
勇斗はあの時、言えない真実と、そんな重い責任や後悔を一人で抱え込んでいたのだ。
点と点が繋がり、明里の言葉が容赦なく私の胸に突き刺さる。
ぎゅっと胸が詰まって、息が苦しくなった。
「そんな……勇斗のせいじゃないのに……」
悪いのは、私と新太の問題だ。それなのに勇斗にまでそんな責任を感じさせていたなんて、申し訳なさで押しつぶされそうになる。
私の落ち込みぶりに慌てたのか、明里は無理に明るい声をあげた。
「まあ、柚那にそんな顔をさせたくてこの話をしたわけじゃないからさ! ほら、暗い顔はナシ! ……それにしても新太、なんであんなにイライラしたんだろうね。なんか、前の新太とは違うよね……」
明里のその疑問は、私自身が一番答えを知りたい問いだった。
いろいろと話をしているうちに、外の景色が薄暗い群青色へと変わっていく。
気がつけば帰る時間になり、私は明里と駅の改札前で別れた。
一人で上りの電車に乗り込み、ガタゴトと揺られながら、私は明里と話した内容を何度も、何度も頭の中で繰り返していた。
正直、気持ちは複雑に絡み合って、どうしようもなかった。
明里の言う「前の新太とは違う」という言葉。
それは、他ならぬ私が心の底でずっと感じていた違和感そのものだった。
優しくて、いつも私を最優先に考えてくれていた新太。勇斗のような大切な友達に、あんな冷たい言葉を投げつけるような人ではなかったはずなのに。
それなのに、私の心はどこまでも馬鹿だった。
(それでも……私はまだ、新太のことが好きなんだ)
新太は本当に、私の知らない誰かに変わってしまったのだろうか。
それとも私は、もうここにはいない、付き合っていた頃の「理想の新太」をただ必死に追い求めているだけなのだろうか。
答えの出ない問いをぐるぐると考えているうちに、電車はあっという間に最寄り駅に到着してしまった。
帰宅し、いつも通りに夕飯を食べ、お風呂を済ませて自室へ戻る。
パタンとドアを閉めたあとも、私はしばらく立ち尽して激しく迷っていた。
新太に、LINEを送ろうか……。
明里の「別れたからって、もう送っちゃいけないわけじゃない」という言葉が、何度も頭の中を巡る。
今の私に送れる、一番不自然じゃない文面を必死に考えた。
((久しぶり! 今日も部活だった?))
送るなら、これくらいが精一杯だった。
これ以上長くなると重いし、短すぎても不自然だ。
画面を見つめる視界が、緊張で少しにじむ。
指先を小刻みに震わせながら、意を決して送信ボタンを押した。
送ってしまった。
心臓がバクバクと嫌な音を立てて波打つ。
ベッドにスマホを裏返して置き、祈るような気持ちで返信を待った。
……数分後、微かなバイブ音が部屋に響いた。
慌ててスマホをひっくり返す。
((久しぶり。今日は部活が休みだったから、家にいたよ))
案外、普通の返信だった。
冷たく無視されるのが一番怖かったから、新太の文字を見ただけで張り詰めていた肩の力が抜ける。
けれど、そこからやり取りは続かず、結局新太の方から「それじゃ、おやすみ」と言われてあっさりとLINEは終わってしまった。
それでも、スマホを胸に抱きしめながら、少しだけ安堵している自分がいた。
LINEができただけでも、今はいいか……。
私は暗い天井を見上げながら、繋がれた細い糸のような温もりを、静かに噛み締めていた。
私が小さく呟くと、明里は切なそうに目を伏せた。
「勇斗は自分が新太と喧嘩したことよりも、自分のせいで新太と柚那が別れることになってしまったんじゃないかって、すごく気にしてたんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に、新太と別れることになったあの日の記憶が鮮明にフラッシュバックした。
『勇斗……。とりあえず……今日、新太と一緒に帰ることになってる』
無理に笑顔を作ってそう告げた私に対して、あの時の勇斗は眉を深くひそめ、何か言いたげに口を開きかけていた。
(あの時の勇斗の顔……。そういうことだったんだ……っ)
自分が新太を怒らせてしまったせいで、私たちが別れることになったんじゃないか。
勇斗はあの時、言えない真実と、そんな重い責任や後悔を一人で抱え込んでいたのだ。
点と点が繋がり、明里の言葉が容赦なく私の胸に突き刺さる。
ぎゅっと胸が詰まって、息が苦しくなった。
「そんな……勇斗のせいじゃないのに……」
悪いのは、私と新太の問題だ。それなのに勇斗にまでそんな責任を感じさせていたなんて、申し訳なさで押しつぶされそうになる。
私の落ち込みぶりに慌てたのか、明里は無理に明るい声をあげた。
「まあ、柚那にそんな顔をさせたくてこの話をしたわけじゃないからさ! ほら、暗い顔はナシ! ……それにしても新太、なんであんなにイライラしたんだろうね。なんか、前の新太とは違うよね……」
明里のその疑問は、私自身が一番答えを知りたい問いだった。
いろいろと話をしているうちに、外の景色が薄暗い群青色へと変わっていく。
気がつけば帰る時間になり、私は明里と駅の改札前で別れた。
一人で上りの電車に乗り込み、ガタゴトと揺られながら、私は明里と話した内容を何度も、何度も頭の中で繰り返していた。
正直、気持ちは複雑に絡み合って、どうしようもなかった。
明里の言う「前の新太とは違う」という言葉。
それは、他ならぬ私が心の底でずっと感じていた違和感そのものだった。
優しくて、いつも私を最優先に考えてくれていた新太。勇斗のような大切な友達に、あんな冷たい言葉を投げつけるような人ではなかったはずなのに。
それなのに、私の心はどこまでも馬鹿だった。
(それでも……私はまだ、新太のことが好きなんだ)
新太は本当に、私の知らない誰かに変わってしまったのだろうか。
それとも私は、もうここにはいない、付き合っていた頃の「理想の新太」をただ必死に追い求めているだけなのだろうか。
答えの出ない問いをぐるぐると考えているうちに、電車はあっという間に最寄り駅に到着してしまった。
帰宅し、いつも通りに夕飯を食べ、お風呂を済ませて自室へ戻る。
パタンとドアを閉めたあとも、私はしばらく立ち尽して激しく迷っていた。
新太に、LINEを送ろうか……。
明里の「別れたからって、もう送っちゃいけないわけじゃない」という言葉が、何度も頭の中を巡る。
今の私に送れる、一番不自然じゃない文面を必死に考えた。
((久しぶり! 今日も部活だった?))
送るなら、これくらいが精一杯だった。
これ以上長くなると重いし、短すぎても不自然だ。
画面を見つめる視界が、緊張で少しにじむ。
指先を小刻みに震わせながら、意を決して送信ボタンを押した。
送ってしまった。
心臓がバクバクと嫌な音を立てて波打つ。
ベッドにスマホを裏返して置き、祈るような気持ちで返信を待った。
……数分後、微かなバイブ音が部屋に響いた。
慌ててスマホをひっくり返す。
((久しぶり。今日は部活が休みだったから、家にいたよ))
案外、普通の返信だった。
冷たく無視されるのが一番怖かったから、新太の文字を見ただけで張り詰めていた肩の力が抜ける。
けれど、そこからやり取りは続かず、結局新太の方から「それじゃ、おやすみ」と言われてあっさりとLINEは終わってしまった。
それでも、スマホを胸に抱きしめながら、少しだけ安堵している自分がいた。
LINEができただけでも、今はいいか……。
私は暗い天井を見上げながら、繋がれた細い糸のような温もりを、静かに噛み締めていた。