君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

モテる男と、嘘つきな私

​だんだんと夏の気配が色濃くなってきた頃。
高校生活最後となる、学園祭と体育祭の季節がやってきた。

​私と明里は、2年生の時と同じパフォーマンスチームを選択した。ヒップホップのダンス経験がある私は、みんなからの推薦でチーム長に選ばれ、明里が副チーム長として私のサポートをしてくれることになった。

​(明里がいれば心強いな)

​そうホッとしたのもつかの間。あの梨花も、自分のクラスのパフォーマンスチームに参加していると耳にした。
同じチームではないにしろ、これから夏休みの練習でグラウンドや体育館を使えば、嫌でも顔を合わせる機会が増える。それを想像するだけで、早くも憂鬱な気分にさせられた。

​だが、気がかりな理由はもう一つあった。
新太が応援団の団長になり、勇斗が『ブロック長』という大役に就いていたのだ。

​私が新太の態度に思い悩んでいたあの時期。私を心配した勇斗が新太を問い詰め、新太が激怒してそのまま帰ってしまったというあの出来事。
もともと親友同士だった二人だが、あの夜以来、二人の関係がどうなっているのか私は一度も聞いていなかった。

​クラスが違うとはいえ、ブロック長と応援団長というトップの役職上、二人はブロック長会議などで必ず顔を合わせることになる。

​(会議とかで、二人は絶対顔合わせるよね……。気まずくないのかな……)

​そんなある日の夜。いつものように勇斗とLINEをしているとき、私はずっと気になっていたそのことを、思い切って聞いてみることにした。

​『勇斗、ブロック長お疲れ様! 毎日大変そうだね。……あのさ、新太と会議で顔合わせたりするよね? あの件のあと、二人の関係はどうなったの……?』

​送信ボタンを押して少し待っていると、すぐに勇斗から返信が来た。

​『お疲れ! まぁ会議とかでは普通に話すよ。新太も応援団長としてちゃんとやってるし、俺たち男同士だし、そのへんは割り切ってるから大丈夫。心配かけてごめんな!』

​そのカラッとした明るい文面に、私はふぅっと深く息を吐き出して胸を撫で下ろした。

​(よかった……勇斗に迷惑かけてないみたいで)

​『そっか、よかった! 忙しいだろうけど、倒れないように頑張ってね(笑)』

​親友だった二人の間に、決定的な亀裂が入っていなかったことに安心し、私はその夜、久しぶりに穏やかな気持ちで眠りにつくことができた。


​――けれど、その数日後のことだった。

​勇斗といつものように他愛のないLINEのやり取りをしていた夜。
ふいに、彼から思いがけないメッセージが届いた。

​『柚那、俺さ、後輩から告白されたんだ。同じブロックの1年の子で』

​画面の文字を見た瞬間、ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。
息が止まりそうになる中、続くメッセージを震える目で追う。

​『今は学祭の準備で忙しいし、その子のことよく知らないからもちろん断ったんだけどさ。って、いきなりこんな報告されても困るよな(笑)。なんか急だったからビックリして、つい柚那に聞いてほしくて送っちゃった。ごめん!(笑)』

​(……そっか。私に聞いてほしかったんだ)

​断ったという事実にホッとした気持ちと、ズキズキと胸を刺すような痛みが同時に押し寄せてくる。
私は震えそうになる指を必死に押さえつけ、精一杯の強がりで返信を打った。

​『モテる男は大変だね~(笑)。勇斗が知らないだけで、勇斗のことかっこいいとか話してみたいって言ってる女子、結構いるんだよ?(笑)』

​(笑)、という文字を打ち込むたび、視界がじんわりと滲んでいく。

​『そうなの!?(笑)』

​すぐに返ってきた無邪気な反応に、私はポツリと力なく笑った。
何気ない、いつもの「友達」としてのやり取り。
けれど、私の心の中はぐちゃぐちゃだった。

​(こんなの、嫌だ……)

​『友達』でいると決めたはずなのに。
他の誰かに勇斗を取られてしまうかもしれないと想像しただけで、醜い嫉妬で胸が張り裂けそうになる。
彼にとって、誰よりも一番の理解者でいたい。一番近くにいたいと、どうしても願ってしまう私がいる。

​(でも、ダメだ。私から壊すわけにはいかない……)

​私は勇斗と、絶対に友達のままでいると決めたんだから。
この痛みを伴う決心を再び胸に深く刻み込み、あふれ出しそうになる感情を必死に飲み込んで、私は今日もまた、自分自身の心に嘘をつき続けた。
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