君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~
見えなかった素顔
和也くんとドライブに行く約束をしたものの、心のどこかでブレーキがかかっているのか、どうも気乗りがしなかった。
教習所で一瞬だけ感じたあの小さな引っかかりが、心の奥底でまだ燻っているのかもしれない。
学校の休み時間、そのモヤモヤとした気持ちを明里にこぼしてみると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「なんで気乗りしないの~? 話を聞いてる分には、悪い人じゃなさそうだけど」
「うーん、自分でもよくわからないんだよね……」
「まあ、まずはそのドライブってやつに行ってみてからだね! 食わず嫌いはもったいないよ!」
明里に明るく背中を押される形で、私はなんとか気合いを入れ直し、ドライブ当日を迎えた。
日曜日。和也くんは、約束通り私の家の近くのコンビニまで車で迎えに来てくれた。
行き先は、少し離れた場所にあるアウトレットモール。
それぞれが見たい服や雑貨の店を一緒に巡り、お昼は混雑を避けてテイクアウトしたものを車内で食べた。
「ちょっと、教習所の成果見せてよ」
帰り道、和也くんに促される形で、空いている道路で少しだけ私が運転席に座ることになった。
他人の車を運転する緊張感と、助手席から向けられる視線に、ハンドルを握る手に自然と力が入る。
「あ、そこもっとスピード落としたほうがよくない?」
悪気はないのだろうけれど、どこか指図するような彼の口調に、胸の奥がチクリと微かに波立った。
すぐに運転を代わってもらったものの、その時に感じたモヤモヤとした居心地の悪さは、消えないまま夕方へと溶けていった。
そのまま景色のいい展望台へ寄り、自宅周辺まで帰ってきた頃には、すっかり日が暮れ始めていた。
車内での会話も途切れることはなかったし、ドライブ自体は決して悪いものではなかった。
……ただ、心から楽しいかと言われると、どうしても頷けない自分がいる。
波長が合わないというか、何かが決定的にズレているような、そんな感覚。
夕食をどうするか相談した結果、以前LINEで「美味しい」と話題にしていたラーメン屋に行くことになった。
店に入り、注文を済ませる。
「ここのラーメン美味いんだよね。食後のアイスも楽しみだね」
そんな会話を交わしながら、料理が運ばれてくるのを待った。
やがて熱々のラーメンが運ばれてきて、私たちは箸を進めた。
しかし、私はラーメンを口に運びながら、少しずつ彼に対する違和感をはっきりと自覚し始めていた。
ズルズルと響く大きな音。独特な箸の持ち方。
お昼はハンバーガーのテイクアウトだったから気がつかなかったけれど、こうして向かい合って食事の時間を共有することで、見えなかった部分が次々と目についてしまう。
そして、ラーメンを完食したあとのことだった。
和也くんが、食後のアイスを頼もうとテーブルの呼び出しベルを鳴らした。
忙しそうに動き回っていた50代くらいの男性店員さんが、「お待たせいたしました」と急いでテーブルにやってくると、彼はこう言った。
「ちょ、頼んであったアイス持ってきてくれる?」
……え?
私は自分の耳を疑った。
友達に話しかけるような、いや、それ以上に横柄で上から目線な言葉遣い。
相手は明らかに年上の店員さんだ。
私は慌てて「すみません、お願いします」と小声で付け加えたけれど、私の動揺に和也くんは全く気がついていない。
数分後、アイスが運ばれてきた時も、和也くんは店員さんに向かって「ん」と顎をしゃくるようにしただけで、「ありがとうございます」の一言も発しなかった。
(……無理かもしれない)
このラーメン屋に入ってから、和也くんの言動がいくつも気になって仕方がない。
食べ方、そして話し方。
店員さんへの態度は、その人の本性を表すというけれど、まさにその通りだと思った。
明里に言っていた「理由のわからないモヤモヤ」は、晴れるどころか、明確な「拒絶」へと変わり、私の中でスッと心の温度が下がるのを感じていた。
教習所で一瞬だけ感じたあの小さな引っかかりが、心の奥底でまだ燻っているのかもしれない。
学校の休み時間、そのモヤモヤとした気持ちを明里にこぼしてみると、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「なんで気乗りしないの~? 話を聞いてる分には、悪い人じゃなさそうだけど」
「うーん、自分でもよくわからないんだよね……」
「まあ、まずはそのドライブってやつに行ってみてからだね! 食わず嫌いはもったいないよ!」
明里に明るく背中を押される形で、私はなんとか気合いを入れ直し、ドライブ当日を迎えた。
日曜日。和也くんは、約束通り私の家の近くのコンビニまで車で迎えに来てくれた。
行き先は、少し離れた場所にあるアウトレットモール。
それぞれが見たい服や雑貨の店を一緒に巡り、お昼は混雑を避けてテイクアウトしたものを車内で食べた。
「ちょっと、教習所の成果見せてよ」
帰り道、和也くんに促される形で、空いている道路で少しだけ私が運転席に座ることになった。
他人の車を運転する緊張感と、助手席から向けられる視線に、ハンドルを握る手に自然と力が入る。
「あ、そこもっとスピード落としたほうがよくない?」
悪気はないのだろうけれど、どこか指図するような彼の口調に、胸の奥がチクリと微かに波立った。
すぐに運転を代わってもらったものの、その時に感じたモヤモヤとした居心地の悪さは、消えないまま夕方へと溶けていった。
そのまま景色のいい展望台へ寄り、自宅周辺まで帰ってきた頃には、すっかり日が暮れ始めていた。
車内での会話も途切れることはなかったし、ドライブ自体は決して悪いものではなかった。
……ただ、心から楽しいかと言われると、どうしても頷けない自分がいる。
波長が合わないというか、何かが決定的にズレているような、そんな感覚。
夕食をどうするか相談した結果、以前LINEで「美味しい」と話題にしていたラーメン屋に行くことになった。
店に入り、注文を済ませる。
「ここのラーメン美味いんだよね。食後のアイスも楽しみだね」
そんな会話を交わしながら、料理が運ばれてくるのを待った。
やがて熱々のラーメンが運ばれてきて、私たちは箸を進めた。
しかし、私はラーメンを口に運びながら、少しずつ彼に対する違和感をはっきりと自覚し始めていた。
ズルズルと響く大きな音。独特な箸の持ち方。
お昼はハンバーガーのテイクアウトだったから気がつかなかったけれど、こうして向かい合って食事の時間を共有することで、見えなかった部分が次々と目についてしまう。
そして、ラーメンを完食したあとのことだった。
和也くんが、食後のアイスを頼もうとテーブルの呼び出しベルを鳴らした。
忙しそうに動き回っていた50代くらいの男性店員さんが、「お待たせいたしました」と急いでテーブルにやってくると、彼はこう言った。
「ちょ、頼んであったアイス持ってきてくれる?」
……え?
私は自分の耳を疑った。
友達に話しかけるような、いや、それ以上に横柄で上から目線な言葉遣い。
相手は明らかに年上の店員さんだ。
私は慌てて「すみません、お願いします」と小声で付け加えたけれど、私の動揺に和也くんは全く気がついていない。
数分後、アイスが運ばれてきた時も、和也くんは店員さんに向かって「ん」と顎をしゃくるようにしただけで、「ありがとうございます」の一言も発しなかった。
(……無理かもしれない)
このラーメン屋に入ってから、和也くんの言動がいくつも気になって仕方がない。
食べ方、そして話し方。
店員さんへの態度は、その人の本性を表すというけれど、まさにその通りだと思った。
明里に言っていた「理由のわからないモヤモヤ」は、晴れるどころか、明確な「拒絶」へと変わり、私の中でスッと心の温度が下がるのを感じていた。