〜落ちこぼれ魔女は天才の弟子に溺愛される〜

幕間

*幕間です。
*拾い拾われ二年目、セディオス十四歳のお話


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 その朝。
 
「おはようございます、先生」
「おはよう……」

 起き抜け。屈託なく笑う少年を前にシェリーは内心、ひどく驚いていた。

 弟子の背がまた伸びていると。

「朝食出来てますよ」
「……ありがとう、今日も美味しそうだね」

 子供の成長は早いものだと知っているつもりではいたけれど。まさかこれほどまでとは思わなかった。
 成長期真っ盛りの愛弟子は、順調にその背を伸ばしていた。つい先日までシェリーは、その愛くるしい顔に見上げられていたはずなのに、いつの間にか、目線は同じ位置にまで到達していた。

「いい匂い」

 シェリーは動揺を隠しながら、テーブルについた。そうして食卓を彩っている暖かそうな琥珀色のスープを覗き込む。セディオスお手製のオニオンスープだ。

「いただきましょうか」
「ええ」

 真向かいに座ったセディオスが付け合わせのサラダとパンを並べ終わり、いつもの朝食が始まる。シェリーは焼き立てのパンを千切りながら、弟子の顔を見つめた。
 
「……セディオスくん、また背が伸びたのね」
「ああ、みたいですね。 毎晩身体が痛くてたまりません」

 そう苦笑するセディオスの細かった声も、大人のそれへと変貌を見せ始めていた。
 まだ、十四歳になったばかりだと言うのに。

「そうなんだ……じゃあ、追い越されちゃうのも、時間の問題ね」
「ですかね」

 身体も鍛えてるんですよ、と笑う少年に、シェリーは力なく「うん」と頷く。

 多くの魔術師がそうであるように、そう遠くはない未来、セディオスは自分のもとを旅立つのだろう。弟子は、一人前になれば師のそばを離れるのが普通だ。そのために学んでいるのだから、当たり前ではあるのだけど。
 そして魔術にひどく長けたこの少年は、それはそれは立派な魔術師になるに違いなかった。それこそ、シェリーが誇りに思えるくらいの。
 それは本来なら喜ぶべきことだ。
 けれど。

 けれど。
 
(そんなに早く大人にならなくてもいいじゃない)
 
 けれど今は、どうしたって寂しさの方が上回ってしまっていた。
 シェリーは、素直で明るくこんなにも自分を慕ってくれるセディオスのことが、可愛くて可愛くて仕方がなかった。セディオスのためなら、なんだってしてあげたいと思うくらいに。

 ──このままずっと一緒にいられたらいいのに。

 シェリーは決して叶うことのない、口にするつもりもない望みを心の奥深くに沈める。そうして弟子が丁寧に作ってくれたスープを飲み込んだ。
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