各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~

第11駅:並走するラストラン

病院の待合室。
お揃いの白いお薬手帳を持った彼――蓮太(れんた)と目が合ったのは、桜の蕾が膨らみ始めた春のことだった。
「……君も、あと半年なんだって?」
中庭のベンチで、蓮太はカルテのコピーを見せながら、まるで天気のことを話すみたいに軽いトーンで言った。
心臓の病気を抱える私と、悪性の腫瘍を抱える蓮太。
私たちは偶然にも、同じ病院で、同じ「残り半年」という終着駅を告げられた同士だった。
普通なら絶望するはずの状況なのに、蓮太のぶっきらぼうな優しさは、私の凍りついた心を不思議と溶かしていった。
「なぁ、シオリ。どうせ終わるレールならさ、最後まで楽しく並走しようぜ」
それから、私たちの「半年の恋」が始まった。
体調が良い日を見計らっては、各駅停車に乗って、少しだけ遠くの海を見に行ったり、美味しいものを食べたりした。
夏が過ぎ、秋の風が吹く頃には、お互いの身体は確実に動かなくなっていった。
病院のベッドの上、点滴の音が静かに響く病室で、私は蓮太の手を握る。
「ねえ、蓮太。私、蓮太に会えて、病気になって最悪だった人生が、最高の人生になっちゃったよ」
「バカ、何言ってるんだよ。……俺のセリフだろ」
蓮太の目から、一滴の涙がこぼれる。
私たちは知っている。二人の恋には、未来がないことを。
どちらが先に行っても、残された方の絶望は目に見えている。
相手を好きになればなるほど、終わりの瞬間が怖くなる。
これは、お互いの未来を奪い合う、世界一悲しい片思いだ。
「蓮太、約束して。あっちの駅に着いても、絶対に私のこと見つけてね」
「あぁ。各駅停車じゃなくて、特急で追いかけるから。……大好きだよ、シオリ」
窓の外、最後の冬の雪が静かに舞い落ちる。
同じ速度で、同じ場所へと向かう、私たちの命のラストラン。
交わした手の温もりだけが、私たちがここに生きた確かな証だった。
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