各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~

第3駅:片道切符のディスティネーション

「あ、見て、ハル。あの向こうのホーム、夕日が綺麗だよ」
そう言って、透は誰もいない無人駅の向こう側を指差した。
カメラが趣味の透の横顔を、私は隣でじっと見つめる。
ファインダーを覗く真剣な目、少し癖のある髪。私の世界は、いつだって透を中心に回っている。
だけど、透のレンズが私に向くことはない。
「……そお? 綺麗だね」
「うん。……あいつ、こういう景色、絶対に好きだと思うんだよな」
透が少し照れくさそうに笑いながら、スマホの画面を見つめる。
画面に映っているのは、私の親友の美咲。
いつも明るくて、誰からも好かれる太陽みたいな女の子。
透が好きなのは、私じゃない。美咲だ。
そして、透が私と一緒にいるのは、私が美咲の親友だから。
「ハル、今度の日曜さ、美咲も誘って3人でどっか行かない? 美咲の行きたがってたカフェ、調べたんだ」
「……うん、いいよ。美咲に連絡してみるね」
胸の奥がチクリと痛む。
透の恋を応援したい自分と、本当は私だけを見てほしい自分。
二つの感情が、心の中でずっと押し問答を続けている。
透が美咲のことを話すたび、私の片思いは行き先のない片道切符のように、どんどん遠くへ運ばれていく気がした。
ゴトゴトと音を立てて、私たちが乗るべき電車がホームに入ってくる。
「ハル、乗ろうぜ」
「あ、うん。……ねえ、透」
ドアが開く瞬間、私は柄にもなく、透のシャツの裾をほんの少しだけつまんだ。
「何? どうした?」
「……ううん、なんでもない。電車の座席、空いてるといいね」
言えるわけがない。私の好きな人には、大好きな人がいる。
それでも、隣に並んで揺られるこの各駅停車の時間だけは、私だけのものだと信じたかった。
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