各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~
第6駅:終着駅のサイレン
「高橋、またこの問題間違えてるぞ。各駅停車じゃなくて快速に乗るレベルのケアレスミスだ」
放課後の進路指導室。
夕暮れの光が差し込む中、数学の藤堂先生が、私のノートをトントンと指先で叩いた。
少し着崩したスーツ、眼鏡の奥の優しい目、ほのかに香るコーヒーの匂い。
先生、違うよ。
私が本当に間違えて迷子になっているのは、数学の公式じゃなくて、先生への気持ち。
「……だって、先生の教え方がスパルタなんだもん」
「これでも手加減してる方だ。ほら、ここを二乗して――」
先生が私の手元を覗き込む。
一瞬、先生の肩と私の肩が触れそうになって、心臓が爆発しそうになる。
先生にとって、私は数多くいる生徒の中のひとりに過ぎない。
「先生と生徒」というレールの上を走っている限り、この恋が終着駅(ハッピーエンド)にたどり着くことは絶対にない。
そんなこと、痛いほど分かっている。
「先生ってさ、休みの日は何してるの?」
「ん? 読書とか、普通のことしかしてないよ」
「ふーん……。じゃあさ、好きな人とか、いるの?」
冗談っぽく聞いた私に、先生は一瞬だけ驚いたような顔をして、それから困ったように笑って私の頭をぽんぽんと叩いた。
「子供がそんなこと気にするな。早く受験勉強しろ」
子供。またその言葉で片付けられてしまう。
早く大人になりたい。先生と同じホームに立ちたい。
カンカンカン、と踏切の警報音が遠くから響いてくる。
私が卒業するまで、あと1年。
この恋のブレーキの踏み方を、私はまだ知らない。
放課後の進路指導室。
夕暮れの光が差し込む中、数学の藤堂先生が、私のノートをトントンと指先で叩いた。
少し着崩したスーツ、眼鏡の奥の優しい目、ほのかに香るコーヒーの匂い。
先生、違うよ。
私が本当に間違えて迷子になっているのは、数学の公式じゃなくて、先生への気持ち。
「……だって、先生の教え方がスパルタなんだもん」
「これでも手加減してる方だ。ほら、ここを二乗して――」
先生が私の手元を覗き込む。
一瞬、先生の肩と私の肩が触れそうになって、心臓が爆発しそうになる。
先生にとって、私は数多くいる生徒の中のひとりに過ぎない。
「先生と生徒」というレールの上を走っている限り、この恋が終着駅(ハッピーエンド)にたどり着くことは絶対にない。
そんなこと、痛いほど分かっている。
「先生ってさ、休みの日は何してるの?」
「ん? 読書とか、普通のことしかしてないよ」
「ふーん……。じゃあさ、好きな人とか、いるの?」
冗談っぽく聞いた私に、先生は一瞬だけ驚いたような顔をして、それから困ったように笑って私の頭をぽんぽんと叩いた。
「子供がそんなこと気にするな。早く受験勉強しろ」
子供。またその言葉で片付けられてしまう。
早く大人になりたい。先生と同じホームに立ちたい。
カンカンカン、と踏切の警報音が遠くから響いてくる。
私が卒業するまで、あと1年。
この恋のブレーキの踏み方を、私はまだ知らない。