聖女の力を搾取されて使い捨てられた元聖女は、辺境地へ国外追放されて冷酷聖騎士に溺愛されながら運命愛に導かれました
 マリーと大司教の平行線の論争にハンナが口を挟む。
 「そうです。マリーさんはうちの教派、リベルテ教派に入っています。マリーさんの意志を尊重すべきです」
 牧師であるハンナがマリーへ口添えをする。
 「もちろんです。大聖女アンナ様の生まれ変わりのマリー様。英雄聖騎士様の生まれ変わりの聖騎士王太子殿下がご一緒におられる事は当然の事です。お二人のご活躍に期待しております」
 大司教は何度もマリーへ言った言葉と同じ意味の言葉を繰り返す。
 「そうじゃなくて……」
 マリーは自分の両手を握り、大司教へ何と言ったら分かってもらえるかと困り果てる。
 「はあ? マリーちゃんが言っていることが理解できないの? 教会が二人を引き裂くなんてひどすぎ!」
 ヘレナはマリーの訴えを聞かない大司教に文句を言う。
 マリーは自分の両手をさらに強く握る。
 (わたしはウィラルド様と結婚したいの!)
 マリーは心の中で叫ぶ。
 しかしマリーは王太子であるウィラルドの同意もなく叫ぶ事はできない。
 (どうしよう……)
 マリーの言葉は大司教に聞く耳を持たれない。
 大司教はマリーへ同じ言葉を繰り返し、何度も投げかける。
 マリーは俯き、黙りこんでしまった。
 (わたしがウィラルド様と結ばれたいと思うのは我が儘なの……?)
 マリーは大司教の言葉に負けそうになる。
 しかしマリーはもう一度大司教へ自分の意志を伝える事を決めて言葉にしようとしたが、先に言葉を発したのはウィラルドだった。
 ウィラルドはマリーと大司教の論争に耐えきれなくなり、大司教へ言い放つ。
 「黙れ」
 大司教は一方的にマリーへ教会に戻るように説得するが、ウィラルドの言葉で説得を止める。
 「聖騎士王太子殿下、どうされましたか?」
 大司教は落ち着いた声でウィラルドへ問うと、論争を止める言葉がウィラルドから返ってくる。
 「マリーは俺の最愛の女性だ」
 「!」
 マリーはウィラルドの言葉に息を飲む。
 「誰だろうと、王太子の婚姻に口出しすることは許さない」
 ウィラルドは力強い声で大司教へ宣言する。
 大司教は何も言えず、顔色を変えないように努めて黙り込む。
 「ウィラルド様……」
 マリーは驚きと嬉しさで瞳を滲ませながらウィラルドの名前を呼ぶ。
 「もう誰にも何も言わせない。マリー、愛している」
 ウィラルドは大司教へ宣言した声とは違う、優しく甘い声でマリーへ愛を伝える。
 マリーはウィラルドに待ち望んでいた言葉を言われて、嬉し涙と満面の笑みを浮かべる。
 「わたしもウィラルド様、ウィラルドを愛しています」
 マリーとウィラルドは互いの愛情を伝え合うように抱きしめ合う。
 マリーから一筋の嬉し涙が流れる。
 それはマリーの中から二人を見守り、微笑みを浮かべるアンナの頬にも流れていた。

 大司教は愛おしそうに抱きしめ合う二人を呆然と見つめる事しかできなかった。
< 115 / 133 >

この作品をシェア

pagetop