く ち な し―身代わりの恋
「理くん、待たせたね」

生ビールを一杯あけたところで、センセイのお出ましだ。
祐介さんはカウンターの俺の隣に座ると、「烏龍茶」とつまらない注文をしていた。

「俺、一人で飲ませる気?」

「こんな所で泥酔して誰かに見られたらマズイからね」

まさに用意周到。
酔って俺にペラペラ何かを話してしまうのを警戒してるんだろう。
この人は、あんまりお酒が強くないから。

「で、珍しく俺を誘ったわけは?」

県議となれば毎日多忙だろう。
俺みたいな作家かぶれの義弟の相手する時間も惜しいはず。
それでも、こうやって出向いてくるのは、

「最近、姉さんが元気ないって親父も心配してたから、何かあったかな?って」

町の ″名士 ″の機嫌を損ねたくないから。

「お義父さんが? そうか?」

ほら。祐介さんの顔がひきつった。
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