振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。

「澪?」

隣で咲が小さく声をかけてきた。

「大丈夫?」

「う、うん。」

全然大丈夫じゃない。

心臓がうるさいくらい鳴っている。

「顔真いけど平気?」

「あ、ちょっと暑いだけ。」

「でもエアコン効いてるよ?」

「……。」

何も言い返せない。

その時だった。

「篠宮、お前遅れたんだから歌えよ!」

誰かがマイクを光へ向ける。

「いや。」

即答。

「えー!」

「歌ってよ!」

「無理。パス。」

女子たちが残念そうな顔をする。


< 29 / 352 >

この作品をシェア

pagetop