ミミミちゃん(意味が分かると怖い話)

百目リング(1)

「水溶液において、物質を溶かしている液体を溶媒と言い……。
溶けている物質そのものを、溶質と呼ぶ。
そして、溶質が溶媒に溶けている液全体が、水溶液となり……」

もうっ、何言ってるの!? さっぱりわかんないっ!

サヤカは理科の教科書を机に投げ出して、頭を抱えた。

勉強なんて大キライだ。小学生のころから苦手だったけれど、中学に入ってからは授業のスピードが上がって、すっかり置いてけぼりになっている。

それでも、いまは机に向かわなくちゃいけない理由があった。

学校の友だちと一緒に行こうと約束した夏祭り。カナもチヒロも浴衣を着て行くって話している。

だから、サヤカも買ってもらわなくてはならない。
手を合わせて猫なで声でお願いしたのに、お母さんからは条件を出されてしまった。

「期末テストで全教科70点以上を取れたらね」

みんなはかわいい浴衣姿なのに、サヤカだけTシャツにハーフパンツなんて、絶対にイヤだった。

サヤカは気合をふるいたたせて、教科書をつかんだ。だけど、3行も読むとやっぱりイヤになってまた本を放り出してしまった。

この数週間、友だちにノートをコピーさせてもらったり、YouTubeで勉強の動画を見たり、サヤカなりにがんばったつもりだった。

だけど、今のところテスト範囲に目を通すことすらできていない。読めたところだって、あまり理解できている気がしなかった。

机の上の時計を見ると、午後5時を指している。
期末テストは、明日からはじまる。

(まともにやったって、もう間に合うわけがないよ……)

マグカップを手に取ると、眠気ざましのカフェオレが空になっていた。

サヤカは気分転換がしたくて、近くのコンビニまで飲み物を買いにいくことにした。
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