~KissHug~
久々に行った芳樹の家

私はいたたまれなくて
テレビをつけた。

ソファーに腰をおろし
芳樹をうかがっていた。


「俺と別れたいだろ?」

突然の言葉にびっくりした。

「別れたいって?」

「こんな将来もないヤツいやだろ?」

「将来がないのは
芳樹が逃げてるからよ。」

「こんな恵まれない環境なら
誰だって逃げたくなる。」

「逃げちゃダメだよ。
今まで通りまじめにしてたら
きっと助けてもらえる」

「同情ならいいよ。」


「だって、一生のことだよ。
大学がすべてじゃないけど
今の時代、すべてが難しいんだから。」


「歩来がそばにいてくれたら……」


ぼそりと芳樹が口にした。


「歩来が一緒なら
歩いていける、普通の人生……」


そう言って私を押し倒した。
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