~KissHug~
春江の変わり果てた姿に
治樹は取り乱した。

全ての費用を自分が持つから
延命させてくれ

そう治樹は、陽介に泣きついた。


陽介の病院に入院した春江の顔を見に
毎日通ってきた。

成長した芳樹に

「とうさんだ。」
と話をしたが、芳樹は冷ややかだった。

母の苦労をみてきただけに
何をしていたんだ
という憤りが
二人の間に一線をひいた。


しばらく病室に寝泊まりしていたが
中学に進学する時期
治樹が新たに自分の家の近くに
ということで
部屋を借りた。


そこに治樹はときたまおとずれたけれど
会話もなく、いつしか
足が遠のいた。


治樹は、春江の病室に住み
目を覚まさない春江に
ひたすら声をかけて
過ごした。


「あの時もっと
素直になっていたら
こんなに苦しめることもなかったのに・・・・」


命をつなぐチューブだけが
治樹の生きる光だった。


「愛してる・・・・」

届かない愛の言葉をささやきながら・・・・
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