~KissHug~

教室に戻った素良は、また冷たい横顔で
私を遠ざけた。

  夢だった?

私は、素良が触った感触を思い出しては
顔が真っ赤になった。
コンプレックスなこの、ぽっちゃり体型が
今日ほど素敵に思えたことは
なかった。

  今度はいつ・・・
待ち遠しい私だった。

千鶴が、素良の席の前の
暗い感じの男子に言った。

「ちょっとそこどけてくれる?」

「俺の席だよ、どうしてどけるの?」

「いいから、どけて!!」

強引に暗い男子に怒鳴った。


しぶしぶよけたイスにどっかり腰を下ろした。

「言葉の使い方、まちがってるし。」

素良が冷たく言った。

「素良~ぁぁ」

素良の机に突っ伏した。
千鶴の肩が揺れた。

「芳樹がね…また、浮気したんだよ。」

素良は、教科書をカバンにしまった。

「もう、3回目…だよ…」

泣き声になった。


「懲りないな…」

「もう、今回は許さないから
別れてやる、ぜったい別れるから」


「別れたためしがない。
それ以上ほざくなよ。」

素良は、呆れたように言った。

「今回は、怒った。
芳樹は、病気だよ…。
こんなに可愛い女がいるのに…
バカでしょう・・・・」


千鶴は、泣き顔のまま
素良を見上げた。


「拭いて・・・」

「やだね。」

「素良~ぁぁ」

「甘えるな、ばーか。」

そう言って、千鶴の涙を
ティッシュで優しく拭いた。

私の胸がチクンと痛んだ。


千鶴は、にっこり笑った。


「素良、大好きよ。」


  それは、私の台詞・・・


素良は、

「ばーか」と言って

千鶴を優しく小突いた。



  痛い・・・・

私の胸が悲鳴をあげた。
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