札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
久しぶりに感じる血の匂い。
オリヴィアは幼い頃に見た光景を思い出していた。
気を抜けば先ほどまで笑っていた誰かが動かなくなっている。
そして二度とその命は戻らない。
自分の心臓の鼓動が、耳元で聞こえてくるような感覚だ。

瞼を閉じたオリヴィアに、エリーが部屋に戻ろうと再び声をかける。
アイナスも部屋の入り口に立つオリヴィアが邪魔なのだろう。
怒鳴り声が耳に届いた瞬間、オリヴィアは腕まくりをしながら丁度布を持ってきた影蜘蛛に声をかけた。


「綺麗な布と包帯をもっと持ってきて!」

「は、はい!」

「オリヴィア様、何を……!」

「──早くっ!」


怒鳴るようなオリヴィアの声に、すぐに影蜘蛛たちが動き出す。
オリヴィアは怪我がひどい女性のもとへと駆け寄り、止血のために傷口に布を被せた。
手で強く圧迫して止血に挑む。
新しい布が届くと、オリヴィアはすぐに他の蜘蛛たちに的確に指示を出していく。


「そこ止血! 圧迫して押さえて。包帯はまだなの!?」


なかなか血が止まらずにさらに体重をかける。


「ゔぅっ……死に、たくない……マイク……」

「死なせない。絶対に……!」


オリヴィアの力強い言葉に女性の目からはポロポロと涙が溢れる。
彼女から発せられたのは大切な者の名前なのだろうか。
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