札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
有無を言わせない対応にオリヴィアは言葉を飲み込んだ。
オリヴィアはここで働きにきた。
それは没落寸前の辺境伯家と、大好きな領民たちや家族、そして最愛の母を助けるためだ。


「もし条件を飲むなら、すぐに書類にサインをしろ」

「…………っ!」

「お前が持っている選択肢は二つ。俺のものになるかならないか……それだけだ」


オリヴィアの眉がぴくりと動く。
この男と対峙して思うことはただ一つ。

(まるで道具のようね。こんなふうに意地悪な言い方ばかりしているから女性たちが耐えられないんだわ)

この娼館のオーナーであるロベールの口ぶりから、女性たちが泣きながら帰ってきた理由がわかってしまった。
一方的に押さえつけるような言い方では、萎縮してしまうのだろう。
そして一番悔しいのは、この男の言う通りにしなければお金は手に入らないということだ。
追い詰められている状況で、オリヴィアは従うしかなかった。

だがオリヴィアは迷っていた。

(今すぐに飛び込むべき……? ううん、まだ少し時間はあるから違う娼館に……)

男は目の前は、そんなオリヴィアの気持ちを察していたのだろ。
顔がどんどんと険しくなっていく。

大金の横には契約書のようなものが数枚置かれていた。
お金が欲しいはずなのに渡される羽根ペンをとることができないのは何故だろうか。
オリヴィアの勘が『とどまれ』と言っているような気がした。

(選択肢はない。けれど……)

ここで踏み止まるべきか、選択を迫られているのだ。
ロベールが立ち上がり天蓋のような場所から出てきて札束を手に取ったことにも気づくことはない。
彼の巨体が影になり、オリヴィアが顔を上げたときだった。

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