札束でビンタから始まる怪力令嬢の勘違い契約結婚~お飾りの妻は最高です~
だが今になってオリヴィアが抵抗するのは違うだろう。
どんなことがあっても耐えなければいけない。
思えば、ディルムーン辺境伯家のためにあそこまでよくしてくれたのは、こうしてオリヴィアを好き放題しても文句を言われないためにするためだろうか。

(一年、地下に隠れて生活しろと!? それともサンドバッグに? 囚人の世話係をすればいいの?)

オリヴィアの頭の中にはさまざまな考えが巡っていた。

(だけど……もう戻れないのね)

幸せそうな母と父の顔が思い浮かぶ。
牢の番人をしていたのか影蜘蛛たちが、ロベールに深々と頭を下げていた。
覚悟を決めたオリヴィアだが、隣を歩いていたロベールの足が止まる。


「父上、俺はオリヴィア・ディルムーンと結婚する」

「ちっ……!?」


ロベールが『父上』と発言したことでオリヴィアは前を見た。
暗がりでよく見えないが、牢の奥では誰かが話している。
髪も伸びきっていて、体も薄汚れていて囚人のように見えるが、彼は確かに牢に向かって父上と言った。


「ほう……まさかディルムーン辺境伯家の令嬢を連れてくるとはな」


その声は掠れていて張りがない。
髪に埋もれて見えないが、しっかりとスカイブルーの瞳がこちらをまっすぐに見据えていた。
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