恋の終電列車
 「帰り道にまた何かあるといけないので、自宅まで送ります。」

 淀野さんの言葉に心から安堵している自分がいた。淀野さんが助けに入らなかったら、私はそのままバッグをひったくられた挙句、突き飛ばされて怪我をしていたかもしれない。

 そう改めて思うと恐ろしくて、私は目の前にいる淀野さんに感謝してもしきれない気持ちになった…。

 「今日は本当に有難うございました。あの日もそうだったけど、2度も助けていただいて…本当に何とお礼を言ったらいいか…あの…何かお返しをさせてください。」

 胸がいっぱいで言葉尻を濁す私に淀野さんが優しく笑った。いつも淀野さんの優しさと笑顔に救われてばかりだ。私はいつも助けてもらっていることに申し訳なさを感じた…。

 「あの時も今も、自分は当然のことをしたまでです。だからお返しなんて気にしないでください。」

 どこまでも真面目で紳士の淀野さんは爽やかな笑顔を私に向けた。ドキンと胸が鳴り、ときめくように心臓が跳ねる。

 「じゃあ、僕はこれで…。」と去ろうとする淀野さんを「あの…。」と咄嗟に引き留めた。

 「良ければ連絡先を教えてくれませんか⁇いつも助けてもらっているお礼をさせてください。」

 言ってしまった後に恥ずかしくて俯いた。淀野さんにとっては職務の一環であり、これは迷惑なことかもしれないと頭の中を過ったからだ。

 でも、淀野さんの言葉は意外な言葉だった。淀野さんはこめかみをぽりぽりと掻いてすこし考えると、「いいですよ。」と一言口にした。

 「えっ⁉︎本当ですか⁉︎」と驚く私に淀野さんは自分のスマホをポケットから取り出し、私達は連絡先を交換した。

 「僕は基本的にはシフト制勤務の三交代制なので、休みもまちまちですが、休みが合えば会ってご飯食べにいく事も可能ですよ。連絡ください。」
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