余所者-よそもの-【 3 】
84話:不可侵領域
――何度、深呼吸しただろう。
扉の前。
僕は一本の鍵を、右手に握りしめていた。
意気地なしめ。
胸の中で毒づいてから、震える手で鍵を差し込む。
「………」
ダメだ、回らない。
手汗で滑りそうになる鍵を掴み、一度抜いた。
もう一度、奥までグッと差し込む。
すると――カチ、と。
小さな音がした。
「……開いた」
紫藤さんしか持っていないはずの、最奥の扉。
――僕はその合鍵を、勝手につくった。
最後にもう一度、深く息を吐く。
今にも飛び出そうな心臓。
ノブを握れば……扉が、開く。