余所者-よそもの-【 3 】
86話:ガラスの義眼
――ガタガタ、と。
カナコさんの部屋から、しばらく物音が立っていた。
紫藤さんは昨日一昨日と、二日連続でカナコさんの部屋に立てこもった。
その間、部屋の中で何があったかはわからない。
それでも、カナコさんの身に何かがあったことは明白だった。
「カナコさん」
「………」
「カナコさん」
僕に構う余裕すらないようだ。
「……カナコさん、入りますよ」
鍵を差し込み、ドアノブを捻れば。
――ドン、と。
カナコさんが向こう側から開きかけたドアを押し込んだ。
「……酷い状態なんでしょ」
「ううん。大丈夫」
「薬を渡します」
「ダメ、今は」
「カナコさん」
「お願い。見られたくないの……」
いつもなら。
どれだけ錯乱してようが、僕は彼女の意志を優先する。
でも――今日は。
「開けます。退いてください」
「やだっ」
「嫌なら目を瞑ってますから」
「だめ。薬も要らない」
「いいえ」
「また今度でいい……」
「僕に、”今度”はありません」
そう言うと、軽くなった扉。
押し開き、中へと入る。