余所者-よそもの-【 3 】

97話:ただいまのあと



ユキは慣れた様子で物を踏みつけながら、玄関を上がっていく。

懐かしいな、なんて思いながら一歩中に入れば、前からユキが手を差し出してきた。


「足場悪いから」


「………」

家の中で使われる言葉じゃないんだけどな。

散らかした本人が真顔で言うものだから、笑っていいのかわからない。


私が手を握ったところで、ユキが後ろを睨みつける。


「お前は帰れ。入ってくるな」

「気を使ってくれなくて大丈夫」

「使ってない」

「使えよ。こんな汚い家」

「じゃあ帰れ」


千景は問答無用で家に上がり、廊下を進むと、寝室の戸を勝手に開けた。


「ママ。今日はもう寝よう。移動で疲れただろうから」


ユキと共に寝室に入れば、ベッドの上だけは無事だった。

物が置かれていない。


「ソファでいいですよ」

「ダメに決まってる」


ユキは私をベッドに寝かせ、布団を掛けた。


「じゃあ僕も一緒に寝よ」

後ろからやってくるなり布団に入ろうとした千景を、ユキが「ふざけるなよ、お前」と言って止めた。

ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した二人。


たしかにこれは『うるさい』。獏に同意する。


こんなのじゃ寝られない。

そう思っていたけれど。


「………」

千景の言った通り今日は疲れてしまったようで、睡魔はすぐにやってきた。

うとうとと上下しだした瞼。


ぼやける視界の先の二人に。


「ユキさんも千景も。なんだかんだ、仲いいよね」


そう声をかけると、不服そうな顔が二つ、こちらを向いて。


「おやすみ、かぁこ」

「おやすみ、ママ」


ピタリと静まった部屋の中、落ちるように眠りについた。


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