短編集〜甘々、逆ハー、無自覚、美少女、ヤンデレ、独占欲、クールいじめ、溺愛、嫉妬〜
 私は長い夢を見て、ベットからガバっと起き上がった。
 昔の夢だ。
 私はこうして裏社会にいて、
 佐藤せりおという名前を捨てたというのに、なぜだか私の中の、
 いじめられっ子だった佐藤せりおがいる。

 私のせいで、ママも他の人も巻き添えになって、忘れられるわけがなかった。
 ママはどうあがいても、この世界にはいない。

「私は、いじめられっ子になんて、ならない・・・」

「どうしたんだ?」
 
 ベットの近くにいたペンギンの姿をした妖精のペングウィーノが声をかけた。

 私は、ベンデッタ。
 裏社会に来てから、「復讐」いう意味を込めて、この名前になった。
 だけど、あれだけ憎かった復讐心とかも、時間の経過とともに記憶も思いも薄くなる。

「なんでもない」

 本当は、なんでもないなんてことはない。
 
 そして、私は裏世界にいる。
 いじめられなければ、いじめっ子グループと出会わなければ、本当だったら、今頃平凡な高校生になって、ママもいたのかな?
 私がどんな高校生になっていたかなんて、想像もできない。
 もしもの話なんて、誰もわからないのだから。

 私にパパなんていたのかな?
 パパの話なんて、ママから聞いたことない。

「鏡を見たら、綺麗だぞ?」

 ペングウィーノは、私の容姿をいつも称賛している。
 だけど、私は自分のことを可愛いとも、綺麗とも思っていない。

「ありがとう」

 私は囁くようにつぶやいた。

「言い忘れていた。
15歳の誕生日、おめでとう」

 私は、ここで気づく。
 自分の誕生日すら、意識してなかったことを。
 というか、毎年意識してなくて、ペングウィーノに「誕生日、おめでとう」と言われてからというのがお約束になっている気がした。

 15歳か。

「どうしたんだ?
いつも、暗い顔して。
誕生日、嬉しくない?」

「嬉しい。
こうして、祝ってくれることが」

 ママは私に昔「12歳の誕生日、おめでとう」と言ってくれたことを憶えている。
 まさか、それが最後のママからの誕生祝いになるとは、この時は思わなかった。

「悩み事か?」

「悩み、って言うのかな?
悩みというか、絶望というか、私、救いようがないのよ」

「どうしてだ?」

「私が普通の生活を送れてないから」

「普通って、なんだろうね」

「どういうこと?」

「ベンデッタは、普通を求めるかもしれないけど、なぜ普通がいいと思うんだい?」

「それは、平凡な方が幸せって感じるから」

「ベンデッタは、幸せじゃないのか?」

「逆に、どうして幸せと思えるの?
ママもいないし」

「それを言ったら、ペングウィーノも母親はいない。
だけど、これが幸せとか不幸せと直結するとは思えないんだ」

「ますます、わからない」

「ベンデッタにとっての幸せを見つけよう」

「見つかるといいわね」

 幸せ、か。
 ペングウィーノの言いたいことを、私は理解してなかった。
 私は幸せになれるのだろうか?
 なれるとは思ってない。ないけど、幸せになりたい。
 過去のしがらみから抜けて、イフのことに浸らず、私は幸せを得たい。
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