彼らの夏が終わる
 二時間目を終えた休み時間、藤也は再び部室棟にやってきた。

 しばらくすると、約束どおり三年生が二人やってきた。

 (ひいらぎ)莉子(りこ)一ノ瀬(いちのせ)(そう)――藤也の園芸部の先輩と、その彼氏のサッカー部員だった。


「すんません、ほんと」

「何やってんのお前。三枝と莉子の二人に頼まれたら断れねえだろ」


 颯はメイサの従弟でもある。呆れたように肩をすくめると、サッカー部の部室の扉を開いた。

 そこにはゴミ一つ落ちておらず、道具も整然と並んでいて、まるでバスケ部の部室とは別の部屋のようだった。


「えー、全然違う……」

「汚すと女マネに超切れられるから。三枝以外の女マネも怖いんだよ……」


 颯は渋い顔をしながらも、箒と塵取り、それに使っていないというゴミ箱とゴミ袋、予備の消臭剤まで持たせてくれた。


「あと除湿剤も買っとけ。すぐカビ生えるから」

「ありがとうございます、一ノ瀬先輩。初めて頼もしく見えました」

「一言余計だな、おい。莉子、こいつ生意気なんだけど」

「ていうかなんで柊先輩までいるんですか?」


 部室の中を珍しそうに見て回っていた莉子は、ゆっくりと振り返った。


「私がいないと二人とも喧嘩するでしょう。須藤くん、私の前で私の颯くんに喧嘩売れる?」

「しませんよ、そんな恐ろしいこと」

「颯くん、私の前で私の後輩にちょっかいかける勇気ある?」

「あるわけないだろ。俺に地雷原で踊る趣味ねえから。ていうか園芸部って、結構上下関係厳しい?」


 颯がひそひそと藤也に話しかけると、藤也は心底嫌そうに頷いた。


「運動部より厳しいですよ、うちは」

「マジか……。俺も柊先輩に叱られたいな」

「何バカ言ってるんですか」

「お前、三枝に「しょうがないなあ、須藤くんは」って手取り足取り指導されたくない?」

「されたいに決まってるじゃないですか」

「バカじゃないの?」


 莉子の冷たい声に我へ返った二人は、互いににらみ合ってから、すっと距離を置いた。


「お手数おかけしました、柊先輩、一ノ瀬先輩」


 藤也は二人に頭を下げて、掃除道具をバスケ部の部室に置きに行った。

 相変わらず部室は臭く、藤也は窓を開けて換気したい衝動に駆られた。しかし、カギを開けっぱなしにはできず、泣く泣く扉を閉めて授業へ戻った。
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