死の呼び声
第一話 山頂から逃げる魔術師の少女
はぁはぁはぁ……
「うぐっ」
山頂から全力で走り下る魔術師の女の子。
魔術師のローブを着た赤髪のぽっちゃり型で裾をあげて動きやすいようにしている。
彼女は夕方のオレンジの光に包まれて山頂から尾根に向かう一本道を走る。
道は凸凹しているのに躓きもせずにスムーズに走り続けた。
少女の足を見ると空気の塊みたいなものがゴムのように弾性を持ち、石に引っかけたりしても衝撃を吸収してバランスを崩さないように走ることが出来るようだ。
「はぁはぁ……まさか私の魔法が全然効かないとは……」
右舷には黒い服で覆われた、カッパのようなマントに大きな鎌が突き出た死神のような魔物が、左舷には同じような白い死神を彷彿させる魔物が少女に並走していた。よく見ると地面に足を付けて走っているより、宙に浮いて滑っているように見える。
「せっかく山頂で見つけたのに、ユアイにも教えないと……」
この少女はユアイの魔法学園の同級生だった。
見る見るうちに勇者パーティの大魔導士となったクラスメイトのユアイに比べて、努力しても最上位には届かなかったが地道に冒険者として活動してきた。
今はB級冒険者であり、まだ若い年齢からするとかなり優秀である。
「パーティの皆はやられちゃった。さっきまで楽しく会話してたのに……」
五人の冒険者パーティで、神の力が宿ると言われる宝玉があるかもしれないという山頂の調査に赴いた。この少女の名はミキ。仲間が倒されても、健気に情報を冒険者ギルドに伝えるために、仲間が身を盾にして庇い、パーティを離脱して麓に向かっているのだ。
しかし魔法の通じない白と黒の死神のような魔物に追われている。
「みんな、生きてるよね? 死んでないよね……生きててね、私すぐ戻ってくるから」
汗が滝のように流れ、背後に飛び散っていく。後ろには流れるように水しぶきがはじいている。それには彼女の涙も合わさって、夕陽の光に反射して虹色を作り出す。
「あっ!」
小さな石に引っかかり、その反動で大き目の岩に、足を含めて膝までぶつかってしまった。
尻もちをついてしまったミキ。土がお尻にまとわりつく。
「いたた……マズいわ」
(大きなお尻が恥ずかしい)
もう立ち上がって走り出すのは無理と考え、周囲に結界を張った。
「防御結界マックス!」
黒い死神が鎌を突き立てる。
ガシン! ガシン!
「ヒッ! やめ、やめてよ」
この黒い死神っぽい魔物は自分の知識にはなかった。魔物図鑑にも掲載されていない。似た感じでは死霊リッチだが、魔法を完璧に吸収して自分のエネルギーにするという特性から別の魔物と思えた。
「ユアイに教えて貰った結界が役に立ったけど」
白い死神は水平に鎌を薙ぎ払う。
ガシン! ガシン!
かすかにヒビが結界に入りつつある。
この白い魔物は、死霊リッチと同じような魔物と考えて神聖魔法を使用したが、こちらも魔法を吸収して自分のエネルギーに変えられてしまった。
「ま、マズいわ。結界が長く持たないし」
剣による物理攻撃、攻撃魔法も神聖魔法も通用しない、死霊リッチなら神聖魔法は通じる。こんな出鱈目な魔物を倒せるのは、聖女ミズハしか存在しない。
聖女ミズハは勇者パーティの聖付与師ヨシタカの恋人で、癒しの神聖魔法なのに攻撃しているかのような破壊音や破裂音が轟くという少し変わった神聖魔法の使い手で有名だった。聖女ミズハは大魔導士ユアイと親しい仲で、ミキとは面識が少しだけあった。
パーティのみんなの意見で助力を得ようとしたものの、今はどこに滞在しているかは調査に赴く直前まで分からなかった。
助けを呼ぶならミズハとユアイの二人にするつもりだったが、その前にミキは生き残って麓の冒険者ギルドまで辿り着けるのだろうか。
「ダメ、結界が壊れる。こうなったら……」
ミキはマジックバックからエリクサーを取り出した。
(殺される瞬間、エリクサーを飲んで生き返って、死んだふりをしてやり過ごすしかないわ)
死を間際にしてミキの思考が混乱しノーテンキな発言をするが、あながち間違いでもない。
(死んだふりが通用するかしら……)
エリクサーでも完全に死んだら効果はない。死ぬギリギリで何とか生存を長引かせるというだけである。高価な薬品の為、ミキが使用するのは初めてであった。
◇
【冒険者ギルド】
『いってらっしゃい』
冒険者ギルドの受付嬢から声を掛けられ、
ミズハとユアイが山頂を目指して冒険者ギルドを出発する。
ヨシタカに付与して貰った体力増加で物凄いスピードで走る。
すでに夕暮れに入っていた。
太陽が沈みそうだ。だんだん斜陽が早くなっている気がした。
「ミズハねえさん、間もなく日が沈みます。あの山は少し危険かも」
「全て吹き飛ばせば万事解決よ、ユアイちゃん」
「「ミキ、待ってて」」
この事件が、後に冒険者ギルドを含めた町全体に大きな影を落とすことになる発端となる。
「うぐっ」
山頂から全力で走り下る魔術師の女の子。
魔術師のローブを着た赤髪のぽっちゃり型で裾をあげて動きやすいようにしている。
彼女は夕方のオレンジの光に包まれて山頂から尾根に向かう一本道を走る。
道は凸凹しているのに躓きもせずにスムーズに走り続けた。
少女の足を見ると空気の塊みたいなものがゴムのように弾性を持ち、石に引っかけたりしても衝撃を吸収してバランスを崩さないように走ることが出来るようだ。
「はぁはぁ……まさか私の魔法が全然効かないとは……」
右舷には黒い服で覆われた、カッパのようなマントに大きな鎌が突き出た死神のような魔物が、左舷には同じような白い死神を彷彿させる魔物が少女に並走していた。よく見ると地面に足を付けて走っているより、宙に浮いて滑っているように見える。
「せっかく山頂で見つけたのに、ユアイにも教えないと……」
この少女はユアイの魔法学園の同級生だった。
見る見るうちに勇者パーティの大魔導士となったクラスメイトのユアイに比べて、努力しても最上位には届かなかったが地道に冒険者として活動してきた。
今はB級冒険者であり、まだ若い年齢からするとかなり優秀である。
「パーティの皆はやられちゃった。さっきまで楽しく会話してたのに……」
五人の冒険者パーティで、神の力が宿ると言われる宝玉があるかもしれないという山頂の調査に赴いた。この少女の名はミキ。仲間が倒されても、健気に情報を冒険者ギルドに伝えるために、仲間が身を盾にして庇い、パーティを離脱して麓に向かっているのだ。
しかし魔法の通じない白と黒の死神のような魔物に追われている。
「みんな、生きてるよね? 死んでないよね……生きててね、私すぐ戻ってくるから」
汗が滝のように流れ、背後に飛び散っていく。後ろには流れるように水しぶきがはじいている。それには彼女の涙も合わさって、夕陽の光に反射して虹色を作り出す。
「あっ!」
小さな石に引っかかり、その反動で大き目の岩に、足を含めて膝までぶつかってしまった。
尻もちをついてしまったミキ。土がお尻にまとわりつく。
「いたた……マズいわ」
(大きなお尻が恥ずかしい)
もう立ち上がって走り出すのは無理と考え、周囲に結界を張った。
「防御結界マックス!」
黒い死神が鎌を突き立てる。
ガシン! ガシン!
「ヒッ! やめ、やめてよ」
この黒い死神っぽい魔物は自分の知識にはなかった。魔物図鑑にも掲載されていない。似た感じでは死霊リッチだが、魔法を完璧に吸収して自分のエネルギーにするという特性から別の魔物と思えた。
「ユアイに教えて貰った結界が役に立ったけど」
白い死神は水平に鎌を薙ぎ払う。
ガシン! ガシン!
かすかにヒビが結界に入りつつある。
この白い魔物は、死霊リッチと同じような魔物と考えて神聖魔法を使用したが、こちらも魔法を吸収して自分のエネルギーに変えられてしまった。
「ま、マズいわ。結界が長く持たないし」
剣による物理攻撃、攻撃魔法も神聖魔法も通用しない、死霊リッチなら神聖魔法は通じる。こんな出鱈目な魔物を倒せるのは、聖女ミズハしか存在しない。
聖女ミズハは勇者パーティの聖付与師ヨシタカの恋人で、癒しの神聖魔法なのに攻撃しているかのような破壊音や破裂音が轟くという少し変わった神聖魔法の使い手で有名だった。聖女ミズハは大魔導士ユアイと親しい仲で、ミキとは面識が少しだけあった。
パーティのみんなの意見で助力を得ようとしたものの、今はどこに滞在しているかは調査に赴く直前まで分からなかった。
助けを呼ぶならミズハとユアイの二人にするつもりだったが、その前にミキは生き残って麓の冒険者ギルドまで辿り着けるのだろうか。
「ダメ、結界が壊れる。こうなったら……」
ミキはマジックバックからエリクサーを取り出した。
(殺される瞬間、エリクサーを飲んで生き返って、死んだふりをしてやり過ごすしかないわ)
死を間際にしてミキの思考が混乱しノーテンキな発言をするが、あながち間違いでもない。
(死んだふりが通用するかしら……)
エリクサーでも完全に死んだら効果はない。死ぬギリギリで何とか生存を長引かせるというだけである。高価な薬品の為、ミキが使用するのは初めてであった。
◇
【冒険者ギルド】
『いってらっしゃい』
冒険者ギルドの受付嬢から声を掛けられ、
ミズハとユアイが山頂を目指して冒険者ギルドを出発する。
ヨシタカに付与して貰った体力増加で物凄いスピードで走る。
すでに夕暮れに入っていた。
太陽が沈みそうだ。だんだん斜陽が早くなっている気がした。
「ミズハねえさん、間もなく日が沈みます。あの山は少し危険かも」
「全て吹き飛ばせば万事解決よ、ユアイちゃん」
「「ミキ、待ってて」」
この事件が、後に冒険者ギルドを含めた町全体に大きな影を落とすことになる発端となる。