ゆっくり紡ぐ、愛の言葉
家に帰り愛斗は美登里と夜ご飯食べて寝た。
朝になり送迎バスに乗り仕事に行った。
仕事を終えた愛斗は、会社の送迎バスから降り立った。
辺りは夕暮れの色に染まり、街の明かりがぽつぽつと灯り始める時間だった。
歩き出そうとしたその瞬間、隣に一台の車がゆっくりと停まる。窓が開くと、そこには知可子の顔が見えた。
「愛斗くん、こんにちは。偶然ね」
「知可子さん、どうしたんですか?」
「美登里さんが家で待っているから、よかったら一緒に行きましょう」
愛斗は頷き、隣に乗り込もうとしたが、少し考えて言った。
「その前に、ちょっとミニストップに寄ってもいいですか? 飲み物くらい買っていきたくて」
「ええ、構わないわ」
二人が店の前に着くと、ちょうど送迎バスの運転手を務める中村も、同じように買い物のために車から降りてくるところだった。
「中村さん、お疲れ様です」
「おや、末山さん。こんなところで」
愛斗は隣に立つ知可子を紹介する。
「こちらは友人の澤田澤知可子さんです。知り合いの歌手、美登里の親友でもあります。中村さんは会社の送迎を担当してくださっている方ですよ」
知可子は丁寧に頭を下げ、中村もにこやかに挨拶を返した。三人は店内に入り、それぞれ必要なものを手に取る。
レジで会計を済ませようとしたとき、知可子が「ここは私が出すわ」と愛斗の分もまとめて支払ってしまった。カフェオレと袋入りのお菓子を手渡され、愛斗は慌てて礼を言う。
「すみません、わざわざご馳走になって。ありがとうございます」
「気にしないで。たまにはこれくらいさせてちょうだい」
店を出ると、知可子は車を置いて歩き出す。
「家はもうすぐそこだから、歩いていきましょう」
二人は並んで歩き始めた。道沿いの街灯が長い影を作り、静かな時間が流れていく。
だが、角を曲がったところで、突然人影が飛び出してきた。関ヶ原だ。
彼はニヤニヤと笑いながら手に持ったカメラを二人に向け、シャッター音を響かせる。
「フフン、ちょうどいいところを撮らせてもらったぜ。これで不倫現場をしっかり抑えましたって、SNSにアップしてやるからな」
その下品な言葉に、愛斗の眉間に怒りが走る。彼は一歩前に出て、鋭い目つきで関ヶ原を見据えた。
「また同じ手か? お前はいい加減に学べないのか。ただの友人同士が並んで歩いているだけの写真を、何の証拠にもならない嘘の話に仕立て上げようってのか?」
「どうせ他人は見た目だけで勝手に噂を立てるもんだ」
「そう思っているのなら、大きな間違いだ。前回の件でお前の嘘がどれだけ簡単に崩れるか、自分で思い知ったはずだろう。
今度こそ、こうした写真を悪用して拡散しようものなら、名誉毀損とプライバシー侵害で、前以上に厳しい法的措置を取らせてもらう。それでもやるというのなら、どうぞお好きにしてみろ」
愛斗の声には一切の迷いがなく、ただ事実と責任を突きつける力強さがあった。関ヶ原はその迫力にたじろぎ、カメラを持つ手が少し震えたのを自分でも感じた。
「……くっ、脅すつもりかよ」
「脅しているわけじゃない。現実を教えているだけだ。人の幸せを壊そうとする悪意には、必ず代償が伴う。それを忘れるな」
愛斗はそれ以上相手にする価値もないと判断し、知可子に目配せする。二人は無視して再び歩き出し、後ろに立ち尽くす関ヶ原を置いて、美登里の待つ家へと向かっていった
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