ただいまヒロイン代理中!
「泣くなよ。最後くらい、笑ってお別れしようぜ」

 蓮がくしゃっと笑いながら、私の涙を、親指の腹で優しく払ってくれた。

 その指先はあたたかくて、ほんの少し震えている気がした。

「それに、俺に会いたくなったら、あの小説を読めばいいよ。直接会えなくなっても、俺は必ずそこにいる」

「うんっ……、うん!」

 返事をしたはずが、声に嗚咽が混じって、上手く言葉にならなかった。

 それでも、精いっぱいの泣き笑いで、蓮に向かって大きくうなずく。

「それじゃあ、詩乃。またな」

 蓮は少しだけ名残惜しそうに微笑むと、くるりと私に背を向けた。

 その背中が淡い光に包まれて、ゆっくりと輪郭を溶かしていく。


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