丸い黒縁眼鏡くんの優しい笑顔を独り占めしたい

丸い黒縁眼鏡くん

「いらっしゃいませ」

 厨房からボソッと声が聞こえる。

「3名さまですか?」

 わたしはお箸を拭いていた手を止めて、店の入り口に向かう。

「ご案内いたしますね」

 ニコニコ笑顔でお客様をお迎えする。

「32卓に3名様ご案内いたします!」

 わたしは厨房にも聞こえるぐらいの大きな声を出す。

「いらっしゃいませー」

 丸い黒縁眼鏡をかけた西尾蓮(にしおれん)がまた小さな声でボソッと言った。

 わたしの耳には、必ず彼の声がよく聞こえる。

 聞こえるというより探し当てている……?
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