おかえりが聞こえる病室

処置室

処置室のドアが静かに閉まる。

救急外来の慌ただしさとは違い、部屋の中は落ち着いた空気が流れていた。

壁際には処置に必要な器具が整然と並び、天井の照明だけが静かに部屋を照らしている。

亜美はストレッチャーの上で毛布を胸まで引き上げ、小さく身体を丸めていた。

ママはすぐ横で、その小さな手を包むように握っている。

「亜美ちゃん。」

担当の医師が椅子を引き寄せ、亜美と同じ高さまでしゃがんだ。

白衣の胸には、小さく名前が書かれている。

『小児科 神谷』

先生は柔らかく微笑んだ。

「さっき先生がお話ししたこと、覚えてる?」

亜美は不安そうな顔で、小さくうなずく。

「……お熱の、げんいん。」

「そう。」

先生はゆっくり話し始めた。

「今日はね、腕から少しだけ血をもらって、お熱の原因を調べるよ。」

「その結果を見て、お薬を変えた方がいいか、このまま続けた方がいいかを考えるんだ。」

亜美は先生の顔を見つめたまま、小さく聞いた。

「……いたい?」

先生は少し考えてから答える。

「ちょっとびっくりするかもしれない。」

「でも、ずっと続くわけじゃないよ。」

「終わったら先生がちゃんと『終わったよ』って教える。」

その言葉に、亜美は少しだけ息を吐いた。

怖い。

でも、何をするのか分からないよりは少し安心できた。
< 10 / 50 >

この作品をシェア

pagetop