Ironic Honey
「これは、私の我儘な意見だけど、メリットだけで物事をすべて考えられるのは好きじゃない」

「…というと?」

「私と一緒に過ごすことや…、結婚もそうだけど、メリットかデメリットベースで話をされると義務的に感じて、あなたの感情はそう思っていないのかなと思っちゃうのよ」


 正直に感じたことを話すと千織は少しバツの悪そうな表情をしていた。


「…確かにそうだな。人間関係において、あまり良い言い方とは言えなかったかもしれない。悪い」

「…あっさり認めるのね?」

「俺は仕事ばかりしてきた人間で、常にそういう考え方をしているし、感情で会話をぶつけ合うような付き合いの人間はあまりいないから、聖菜のような考えが欠落していたと思う。気を付ける」


 意外と素直に受け入れてくれて、安堵した。もしかしたら喧嘩になるんじゃないかとも思っていたから。

 今まで私がお付き合いしてきた男性たちは、少し考えを否定すると言い返してきたり、ムッとして会話にならないようなことが多かった。そのためいつも話し合いには億劫になるのだけど、千織は私の考えも受け入れてくれた。これでなおらなかったとしても、気を付けようとしてくれる気持ちだけでもうれしい。


「面倒なこと言ってごめんね」

「いや、言ってくれたほうが助かる。完璧な人間ではないから、これからもきっとおかしいところとかあるかもしれないけど、逐一言ってくれ」

「それはあなたもね」

「そうさせてもらう」


 こんなに和やかな雰囲気で話し合えたのは初めてかもしれない。彼の寛容さに感謝をした夜だった。
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