孤独な先輩と空しか撮れない私の話。
先輩の大学試験当日。
前回に開けた窓から冷え切った空気が鼻にツンと刺さった。
太陽の白い光が棘のように眩しく鋭く反射する。
昨日、「明日の試験、緊張する」との連絡が先輩から入ってきて、私はその事を知った。
「頑張って下さい」
儀礼的な言葉を送信して、私はスマホを閉じた。
早速、シロクマが赤ハチマキを付けた可愛いスタンプが送られてきて、その画面をじっと見つめた。
何か伝えたいことがある気はする。
だけど、何か分からない。
そんな正体不明な感情が渦巻いた。
キーに指が触れるが、「メッセージを入力」の薄い文字が「あ」に切り替わるだけで、言葉は紡げない。
孤独感。
寂しい。
でも、それは受験前の先輩にぶつける言葉じゃない。
「また、会えますよね」
でも、送信ボタンは押せなかった。
スマホに打ち込んだその言葉は一文字ずつ消えて、また「メッセージを入力」の文字に切り替わる。
雲は青い空を覆い隠すように、段々と小さく移ろいでゆく。
いつか、この日々も遠い過去になってしまうのだろうか。
隣の雲に同化して、押しつぶされて、忘れ去られる。
記憶の片隅にすら残らない。
その雲は、古木のむこうに溶けていく。
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