距離感がおかしい後輩に懐かれているが、特に困ってはいない

第13話 距離感がおかしい後輩と在宅勤務した件

 その日、私は在宅勤務だった。
 自宅の机に向かい、パソコンを立ち上げる。

「そういえば、今日は九段坂くんも在宅だったな」

 そう思っていた矢先に、当の本人から通話の呼び出し通知が飛び込んできた。

「先輩、俺、在宅初めてなので、色々教えてくださると嬉しいです」

「そうだな」

「先輩の部屋、整頓されてて綺麗ですよね」

「背景ぼかしにしてるんだが」

 通話アプリの設定を確認したが、やはり背景はぼかされている。
 ……よほど目がいいとかなのか……?
 まあいいか、と気を取り直した。
 別に部屋の中に、見られて困るものもないしな。

「九段坂くん、タイムカードアプリの使い方わかるか?」

「問題なくタイムカード切れてます」

「よし。あとは会社からの指示通りにやってくれ」

 九段坂は「……あの、先輩……」と画面の向こうでもじもじしている。

「どうした?」

「このまま通話繋いでてもいいですか?」

「ああ、構わないよ。わからないことがあったら質問してくれ」

「先輩のことで、俺にわからないことなんてないです。自信あります」

「いや、仕事のことだよ」

 私は思わず笑ってしまった。
 彼はこういった冗談で私を笑わせるのが好きらしい。

「ああ……先輩と通話しながら仕事できる環境最高すぎる。ずっと在宅していたいです」

「会社にもちゃんと来てくれ」

 そんな会話を繰り広げながら、2人で黙々と作業をする。
 ふと、九段坂が顔を上げた。

「そうだ。先輩、ちゃんと朝ご飯食べなきゃ駄目ですよ」

「食べたが」

「トーストだけですよね」

「なんでわかる」

「……勘です」

「怖い勘だな」

 私は肩を竦める。
 どうにも、彼には何でもお見通しのようだ。
 観察力が探偵並みだな。

「朝がトーストだけだと栄養偏ります」

「あんまり食欲ないんだよな、朝」

「じゃあ先輩が食べやすいレシピ、調べておきます」

「仕事終わってからにしてくれ」

 でも、九段坂の言うことも一理ある。
 お昼ご飯はきちんとしたものを作るか。
 せっかく家にいるんだし、冷蔵庫の中も整理したい。

 そう思っていた矢先、通話していた画面が止まり、ぐるぐると読み込み画面になる。

「あ、Wi-Fi切れた」

 次の瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
 九段坂が息せき切って部屋に入ってくる。

「先輩、ご無事ですか!?」

「君はいったいどこで仕事してたんだ……?」

 Wi-Fiが切れてからチャイム鳴るまで体感0.5秒もかかってなかったぞ。

「向かいのカフェです」

「近いな」

「Wi-Fi切れたの見えたので」

「見えるのか」

 私は思わず、窓の外のカフェを見た。

「先輩の窓、ちょうど見える席なんです」

「席を変えろ」
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