悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

②志遠の思惑、支配者の王と計算外の女。

「社長、手配が完了いたしました」

秘書が差し出してきた報告書を受け取りプラチナブルーの瞳を細めた。
報告書にはここ数日ホテルのフロントに届いたあるお客様たちからの感謝の声がズラリと並んでいる。

『道に迷っていたところをフロントの栗原さんに大変親切に案内していただいた』
『素晴らしい笑顔で対応してもらい、旅の疲れが吹き飛んだ』

心温まる話はどうでもいい。
バレていないと思い込んでいる彼女を社長室へ呼び出し嫌がらせをするための口実としては最高。

逢坂の一族に言われるがままに受けた見合い相手に期待してなかった。
由緒正しき家柄の令嬢で俺の資産や肩書あるいはこの容姿に目を輝かせ借りてきた猫のように退屈な女だろうと高を括っていた。
見合い相手の令嬢のことは逢坂グループの名前を使えば調べるなんて簡単な作業で相手は別の男と駆け落ち中だと言うことも初めから知っていた…が。

「まさか彼女だったとは」

「意外でしたね」と秘書は微笑む。

このホテルには買収のこともあって抜き打ちで何度も視察に来てた。
彼女は俺を全く気にせず完璧な接客をし今まで出会った従業員の中でもトップクラスで丁寧な接客とお辞儀をする。
とにかく所作が綺麗で小さな体からは感じさせないオーラを放ってた。

俺を特別視しない彼女のことをもっと知りたく…いや興味を持った。
おもしろ味もない見合いは俺にとって一族の目くらまし用の仮の姿で道化(ピエロ)になった振りをしてるだけ。

そう思ってたところに彼女は転がりこんで来て俺を誘う。
そんな態度に嫌気どころか少なからず興奮してしまった。

「栗原さん、最近までスカーフ巻いてましたけど、理由は社長ですよね」

「含んだ言い方するなよ。魔が差したと言うか、まあ、あれだよ」

動揺って言葉を知らないはずの俺はさすがに少し焦る。
彼女が俺の腕の中で悶える姿と俺の隣で疲れ果てて眠る彼女は今までどの女性にも感じなかった気持ち。
メイクの落ちた素朴で可愛らしい顔を見ては理性をなくし彼女を動けなくしてしまうほど何度も抱いてしまった。

「社長もまだまだ若いですね」

笑いを堪える秘書にムカつきはするけど反論できない。

「お前、うるさいよ」

この答えの出ないモヤモヤな気持ちはカフェでの光景も関係してる?
あの男は誰なんだ?
無防備な笑顔を男に向け、頭を撫でられて…そしてホテルでご褒美…?

「ふざけるな」

「そんなに失礼なこと言いましたっけ?」

「ああ、お前のことじゃない」

カフェの親密な2人の空気が俺の視界に入り何かが胸の奥から湧き上がって黒く息が詰まるほど激しい衝動が押し寄せる。
それは自分の所有物()が他人に汚された不快感なのか?

「面白くない」

「栗原さんのことになると情緒不安定ですね」

ニヤリと笑うと秘書は苦笑いを浮かべながらも「楽しそうですね」と手帳をパタリと閉じた。
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