悪女の代行を演じたら氷の御曹司に永久就職⁉〜お見合い破談に大失敗!私は彼に丸め込まれ溺愛されてます~

①最上階スイートルームの誤算。

「今日で最後!これで借金生活ともお別れ!」

私は脳内で自分を奮い立たせる為に繰り返す。

都会の夜景を眼下に見下ろす有名なホテル・ドゥ・ミエールの最上階。
一泊、数十いや数百万円は下らないロイヤルスイートの豪華な扉を前にして「ふーーっ」と息を吐いた。

「でも、簡単じゃない、うん…そうだよね…」

だって今日の私の任務は恋を育てることじゃなくて一瞬で爆破して木っ端微塵にぶち壊すこと!

「これなら、大丈夫でしょ?それにしても、」

扉の背後に目をやると驚く格好の私がガラスに映ってる。
まさか自分が普段働いているホテルのスイートルームにまさかこんな形で訪れることになるなんて想像してなかった。
この部屋に対して憧れはあったけど出来れば仕事で携わりたかったのに。

「制服じゃない、私がね…」

私のことがバレるわけない!
完全に夜の仮装、いや変装をしている今の私なら大丈夫。

「うぇっぷ。やばい、お酒が今頃…一気に半分以上は飲み過ぎだったかも」

自分の恥ずかしい姿に胃から空気が込み上げてくる。
普段の私はこの髪をきっちりとお団子でまとめ濃紺の制服に身を包み完璧な角度でお客様を迎えている側の人間。

「うぇっ…ぷ」

今の姿はどう見ても夜の街で遊んでそうな危険な香りの悪女(ワル)が酔っぱらってるようにしか見えない。

「これは自分でもドン引きする」

胸元が限界まで開き動くたびにビジューが怪しく光るフューシャピンクのタイトドレス。
髪は派手に巻いた金色のウィッグを片側に寄せうなじをこれ見よがしに露出させている。
ちなみに胸にはちょっぴり自信ありです!

メイクも普段のナチュラルなものとは真逆で目尻のアイラインを上げて唇には毒々しいほど鮮やかな赤の口紅を塗りたくってる。

「よし。栗原(くりはら) 日和(ひより)、行きまーす…じゃなくて、行きまぁ〜す」

バカっぽいけど声のトーンを上げて自分に暗示をかけなきゃやってらんない!

行くよ!
今日の淫らな私!

意を決して重厚なスイートルームの扉をノックして中の返事なんて聞くこともなくこじ開けた。
部屋に一歩、足を踏み入れるとアロマの香りと共に冷気が張り詰めているのを感じる。
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